アイヌについて知るために平取町の二風谷コタンへ【二風谷アイヌ文化博物館・萱野茂 二風谷アイヌ資料館・ウトナイ湖】

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十三日目の朝

早朝に目を覚ました。

 

今朝は道の駅 みついしで買い物をしたかった。

店が開くまでまだ時間がある。

 

昨日も入った、みついし昆布温泉 蔵三で、朝風呂に入ることにした。

 

朝からやっている温泉は本当にありがたいが、運営する側は大変だろうと思う。

湯気の立つ露天風呂とチェアーを往復する。

 

その後、土産物屋で土産を購入。

ここで贈答用に日高昆布を買いたかったのだ。

日高昆布はスーパーなどでも売っていたが、何となく日高に近い直売所で買いたかった。

 

昆布巻きも購入したが、知人に送って無くなってしまった。

もっと買っておけばよかったと、後で後悔。

 



道の駅 サラブレッドロード新冠へ

道の駅 みついしを出て、海岸沿いに西へ向かう。

 

何だか、もう少しで北海道を出るという実感が出てきた。

ゆっくりと走る他車に随伴しながら、海沿いを行く。

 

この辺りの海岸は遠浅で、海藻の加工場がある。

昨日より波高が低い。

 

道の駅 サラブレッドロード新冠に到着。

 

ここ新冠は、サラブレッドの育成で有名だ。

過去に活躍した馬たちのレリーフがある。

 

競馬好きの人にはたまらない場所だろう。

 

道の駅に隣接して、レコードの展示を見学できるレ・コード館もある。

まだ開館時間ではなかった。

 

道の駅でソフトクリームとコーヒーを購入し、次に向かう。

 

平取町の二風谷へ

今日の目的地は、平取町の二風谷だ。

北海道での大きな目的の一つが、二風谷を訪れることだった。

 

二風谷と言えばアイヌ。

 

元々、ゴールデンカムイを読んでアイヌに興味を持ち、アイヌについて調べるようになった。

アイヌ初の国会議員、萱野茂さんの本を読んでいると、二風谷の地名がよく出てきたので、二風谷に興味を持ったのだ。

 

道の駅 サラブレッドロード新冠から、二風谷へ。

途中、海沿いの国道235号から、平取町へと向かう国道237号に入った時、雨が降り出した。

 

どんどん雨足が強くなり、二風谷に着くころには大雨になっていた。

北海道に来てから初めての大雨だったかもしれない。

 

二風谷コタンへ

二風谷に着いた。

 

このあたりには、アイヌの伝統工芸品を扱っている工房などがある。

 

平取町立二風谷アイヌ文化博物館に向けて歩いて行く。

 

博物館前にはアイヌコタン(アイヌの集落)がある。

 

 

これはアイヌのチセ(家)だ。

 

 

阿寒のアイヌコタンでも書いたが、アイヌチセは屋根が段々になっているのが特徴だ。

 

他の所でもいくつかチセを見たが、やはり屋根は段になっていた。

 

 

 

アイヌ文化博物館の中へ

 

コタンの奥にある博物館へ。

 

受付を済ませて奥へ。

 

 

アイヌの使っていた道具が展示されている。

ここにあるのは狩猟道具、ではなく、遊びの道具など、日常で使われていた道具だ。

もちろん狩猟道具なども、他の場所に展示されている。

 

これはアットゥシという織物。

オヒョウという木の皮から作られている。

 

 

 

 

独特なアイヌ模様。

 

アイヌ模様が好きで、阿寒のアイヌコタンで、アイヌ模様の手ぬぐいやポーチ・バンダナなどを購入していた。

 

 

囲炉裏だ。

 

アイヌの囲炉裏もいくつかの場所で見てきたが、基本的な造りは、本州で使われていたものと変わらない気がする。

造るにも使うにも、囲炉裏はこの形が理にかなっているのだろう。

 

 

 

館内には体験コーナーもある。

 

これは仕掛け弓だ。

一見して構造がよく分からず、とりあえず触ってみたら、矢が発射されてしまった。

 

静かな館内に、スパーンという音が鳴り響く。

 

北海道で一番汗をかいた瞬間だった。

 

 

丸木舟だ。

 

後日、丸木舟の実演を見学することになる。

 

 

 

 

Q&Aコーナーがあり、現在アイヌの人がどれくらいいるのか、アイヌ語を話せる人がどのくらいいるのかなどについて書かれている。

 

長い歴史の中で、アイヌと和人が所帯を持つことも多かっただろう。

何をもってアイヌとするのか、ということを定義するのは、もはや難しくなっている。

そんな中で、大事なことは、アイヌとしてのアイデンティティーを持っているかどうかだと書かれている。

 

交通手段やネットの発達により、世界中で人や物の均質化が急速に進んでいる。

所属の問題はアイヌだけに留まらなくなるだろう。

 

後何百年、何千年もしたら、日本民族とは何か、ということが問題になっているかもしれない。

移民の問題など、すでに種はまかれ始めている。

 

博物館の奥へ

 

イコロ(宝刀)などが陳列されている。

 

 

 

イコロの鞘。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

館内を一通り見終わり、外に出た。

 

博物館周辺の散策

 

雨足は弱まったが、まだ降り続いている。

 

こちらの沙流川歴史観は閉館になっているようだ。

 

 

工芸館では工芸品が売っている。

お守りの、イケマの根を購入。

 

 

 

 

 

萱野茂 二風谷アイヌ資料館へ

 

平取町立二風谷アイヌ文化博物館にひきつづき、近くにある、萱野茂 二風谷アイヌ資料館を訪れた。

 

 

萱野茂さんは、ここ二風谷の出身で、アイヌ文化の保存に尽力された方だ。

アイヌ初の国会議員となったことでも有名であり、たくさんのアイヌ関係の著作もある。

 

北海道に来る前、萱野茂さんの著書を含め、アイヌ関係の本に目を通していた。

いくつか北海道に持ってきてもいる。

 

ウエペケレ(昔話)を読んでいると、アイヌの広々とした精神性や生き方に心を打たれる。

前にも書いたが、私も囲炉裏のあるチセを建て、自然のそばで暮らしてみたいと思う。

 

資料館の中へ

 

さて、資料館の中へ。

 

先ほど訪れたアイヌ文化博物館よりもこじんまりとした建物ではあるが、展示はとても充実している。

 

魚皮の着物だ。

 

 

 

 

 

 

こんな生活スペースは憧れだ。

囲炉裏の火にあたりながら、一日中、本でも読んでいたいものだ。

 

アイヌ文化と鮭は切っても切れない関係にある。

 

 

チセを建てているところの写真があった。

 

苫前町郷土資料館で見た解説文によれば、チセは一週間足らずで建てることができるらしい。

 

一週間足らずというのを見て、勝手に簡単に作れるようなイメージをしていたのだが、こうして写真を見ると、やっぱり大がかりな作業だ。

人数も必要になる。

 

 

資料館の二階へ

 

資料館の二階へ上がる。

 

ここには、世界各地の民族の道具が展示されている。

 

奥にあるのは、萱野茂さんの書斎の再現展示だ。

 

エンペラーフィッシュ。

 

 

すごい存在感。

 

 

ナナイとデルスウ・ウザーラ

 

中国の、赫哲(ホジェン)族の絵がたくさん展示されている。

アムール川流域の、中国からロシアにまたがる地域では、ナナイという民族が暮らしている。

赫哲族は、ナナイの中国での呼び名だそうだ。

 

ところで、北海道から帰ってナナイについて調べてみると、かのデルスウ・ウザーラもナナイだったようだ。

 

デルスウは、ロシア人のアルセーニエフが書いた探検記の中に登場する、実在の人物だ。

いくつかの本にもなっているし、黒澤明監督によって映画化もされている。

 

調べているうちに、デルスウ・ウザーラに興味を持ち、アルセーニエフ著のデルスウ・ウザーラ沿海州探検行(東洋文庫)を購入して読んでみた。

 

猟師であるデルスウは自然に精通し、自然の中で生き抜く術を持っているが、それだけではなく高い精神性も持ち合わせている。

アルセーニエフの探検に同行し、持ち前の能力を発揮して活躍する。

 

デルスウは自然の中で生きてきた故に、街の生活に馴染むことができず、最後は悲劇的な結末を迎えることになる。

それも合わせて非常に魅力的な人物だ。

 

二階の続き

さて、二階の見学に戻ろう。

 

 

 

アボリジニの絵付け。

 

このカエルをなでると、無事に帰れるそう。

 

インドの展示。

いつかインドに行ってみたいものだ。

 

一階の奥へ

 

二階を一通り見終え、一階に降りて奥を見に行く。

 

日常で使われるアイヌ語について書いてある。

タント ヘマンタ ア・エ。

 

 

萱野茂さんの肖像や、功績について展示されている。

 

 

アイヌの人々の写真。

とても貴重なものだろう。

 

木を削って作るイナウは、囲炉裏にも舟にも、至る所に奉られている。

 

 

こういった、アイヌの祈りの文化は本当に素晴らしい。

山や海などの自然に触れていると、祈りたくなる気持ちがよく分かる。

 

ポスターに、ゴールデンカムイに登場した言葉が載っていた。

カント オロワ ヤク サク ノ アランケプ シネプ カ イサム

 

意味は、

天から役割なしに降ろされたものはひとつもない

このごろ、自分の役割は何だろうかとよく考えるようになった。

 

資料館を出た。

スイ ウ・ヌカラ・アン ロー

 

 

道の駅 むかわ四季の館へ

 

萱野茂 二風谷アイヌ資料館を出て、また海岸沿いの国道235号へ。

そのまま西へ進む。

 

道の駅 むかわ四季の館に到着。

 

道の駅で買い物をしてから出ると、外は大雨になっていた。

走って車に戻る。

 

道の駅 ウトナイ湖へ

 

とりあえず、苫小牧の北にある、道の駅 ウトナイ湖まで進む。

 

ここで昼食にしよう。

何だかこってりした味噌ラーメンが食べたい気分だ。

 

道の駅に入ると、ホッキカレーの看板を発見。

頭の中がラーメンからカレーに切り替わった。

 

カレーを食べるのは、道の駅 おだいとうで、ホタテのスープカレーを食べて以来だ。

 

カレーに貝は、なぜこんなに合うのだろうか。

 

今日の回想

 

雨が降り続いている。

今日の観光はここまでにしよう。

雨が恨めしいが、北海道に来てから、今までよく降らないでいてくれたものだとも思う。

 

今日は二風谷の観光がメインだった。

 

三石を出発し、新冠を通り過ぎて二風谷へ。

 

平取町立二風谷アイヌ文化博物館と、萱野茂 二風谷アイヌ資料館を訪れた。

 

北海道で、アイヌ関係の博物館や資料館をどうしても訪れたかった。

 

明日もアイヌに関係した場所に行く予定だ。

 

ウトナイ湖の白鳥

 

雨足が弱まったので、道の駅に隣接しているウトナイ湖を見に行ってみることに。

 

 

湖に近付いていくと、湖の傍らに、白鳥の置物があるのを見つけた。

 

 

いや、微動だにしないので置物だと思っていたのだが、近寄っていくと動き出したではないか。

 

 

本物の白鳥だった。

 

 

動かなかったのは、近づいてくる私を警戒していたのだろう。

 

 

白鳥といえば、新潟の瓢湖で飽きるほど見ている。

なので珍しいとは思わないのだが、何であれ、野生の生き物に会うのは楽しいものだ。

 

 

実際の距離感はこのぐらいだ。

 

水かきのアップ。

白鳥の水かきをよく見たのは初めてかもしれない。

瓢湖で見た白鳥は、ほとんどが水の上に浮かんでいたので水かきが見えなかった。

 

 

白鳥は、草を食んだり水を飲んだりしている。

 

 

近付いていくと、小さく鳴き声を上げながら、歩いて遠ざかろうとする。

 

少し距離を取ったまま、しゃがんで話しかけてみる。

こちらに少し興味を持ったものの、すぐに食事に戻ってしまった。

 

十三日目の終わり

道の駅近くの苫小牧市街へ行き、ガソリンを入れ、ポストカードを出した。

 

イオンがあったので、何となく立ち寄ってみる。

イオンはどこにでもある。

見慣れた場所というのは安心する。

 

スーパーを見回り、土産になりそうなものを探す。

昆布だしのしょうゆや十勝丼のタレを購入。

 

夕食もイオンで買った。

 

スマホがすっかりただの板になってしまっている。

ネットがほとんどつながらなくなってしまったのだ。

 

八日前に猿払にいたとき、契約した通信容量を超過しそうだと表示が出た。

細々と使っていたのだが、昨日、完全に制限がかかってしまったようだ。

 

時間をかけて天気予報を開いてみると、明日の天気は悪くなさそうだ。

明日は室蘭の辺りまで向かう予定だった。

 

ようやく北海道の道や雰囲気、旅の時間の流れに適応できてきた気がする。

だからこそ、後二日ほどで北海道を離れるのが残念だ。

 

札幌や旭川を走っていたころが懐かしい。

あのころは、広い道路にたくさんの車が走る中を、道も分からないまま走っていた。

 

ひどく孤独な感じがしたものだが、今はすっかり、道の広さと距離感に慣れてきた。

 

そういえば、ここからすぐの所に千歳があり、その先には札幌がある。

もうすぐ旅も終わりだ。

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