オホーツク海沿いを南下し、道の駅さるふつ公園へ
日本最北端の地・宗谷岬を出発し、さらに海岸沿いの道を南東へと進む。
そうか、岬を回ったということは、今私の左手に広がっているこの海は「オホーツク海」なのだ。

北海道の道路を走っていると、自由に車を停められる駐車スペースをしばしば見かける。
中には「カメラマーク」の標識が立っているパーキングもあり、そういった場所からは例外なく、北海道らしい雄大なパノラマ景色を望むことができる。

右手に広がる牧草地と、左手に広がるオホーツク海の景色に見とれながら車を走らせていると、目的地の「道の駅 さるふつ公園」に到着した。

車を降りると、稚内市街を出たあたりから明らかに気温が低く、風が冷たくなっているのを感じる。
体感だが、現在の気温はたぶん10℃台だろう。
「寒い」というよりは「涼しくて心地よい」ぐらいなので、車中泊やドライブをする身としては、ずっとこのぐらいの気温であってくれると非常に助かる。
そういえば、数日前に内陸の占冠(しむかっぷ)の道の駅を訪れた際は、温度計が「30℃」という真夏日を示していた。

今日の朝、幌延町でトナカイを見た時も、うだるように暑かった。
同じ北海道という括りでも、内陸と沿岸、道南と道北で気候や気温がまるで違う。これもまた、北海道の途方もない広さを物語っている。
さるふつ憩いの湯で旅の軌跡を振り返る
猛烈に腹が減っていたのだが、食事の前にまずはさっぱりと風呂に入りたかった。
道の駅の敷地内に併設されている「さるふつ憩いの湯」へ向かう。

ここは天然温泉ではないようだが、設備も綺麗で実に良い湯だった。
北海道に上陸してからというもの、毎日どこかしらの温泉(硫黄泉やモール泉など)に入っていたので、久しぶりの無色透明・無味無臭の沸かし湯も、かえって新鮮で良いものだ。
湯船にゆったりと浸かりながら、今日一日走ってきた長い道のりを思い返す。
朝、天塩を出発して幌延町のトナカイ観光牧場へ行き、生まれて初めて生きたトナカイを見た。

幌延ビジターセンターでは、サロベツ原野の長沼周辺の木道を歩き、大自然の空気を吸い込んだ。

稚内市街から寒風吹きすさぶノシャップ岬へと抜け、水族館や科学館の展示に見入った。



そして稚内市街を後にして、ついに日本最北端の地・宗谷岬のモニュメントにたどり着いたのだ。

そこからオホーツク海の沿岸を走り抜け、ここ猿払村まで来た。

今日、私はついに日本最北端の地を踏んだ。

今、オホーツク海の沿岸で湯に浸かっているという事実が、激しい移動の疲れとともに、何だか不思議で深い感慨をもたらしてくれる。
北の大地で考える、人間と動物の関係
ぼんやりとお湯に浸かっていると、稚内の青少年科学館で見た「タロとジロ」の物語が再び脳裏をよぎった。
実は、今回私が北海道を旅しようと思った理由の一つに、「人間と動物の関係性について、現場で考えてみたい」という思いがあった。
北海道では、道路にエゾシカが頻繁に飛び出してきたり、住宅街でヒグマと遭遇したというニュースが日常茶飯事だ。
人間と野生動物との距離がこれほど近い場所なら、何か考えるための材料がたくさん転がっているのではないかと思ったのだ。

実際、北海道に来てから今日まで、キツネやシカなど多くの野生動物を見かけた。
私は昔から釣りを趣味にしていたが、ある時期から何となく魚が可哀想になり、すっかり釣り竿を握らなくなってしまった。
以前海でカヤックに乗っていた時、一匹のイナダ(ブリの若魚)が私のカヤックにずっと付いてきたことがあったのだ。

私がオールで音を立てても逃げず、しばらく一緒に並走していた。
その時、普段私が釣りの対象として「モノ」のように扱っていた魚にも、当たり前だが彼らなりの自我や性格、命の煌めきのようなものがあることにハッと気づかされた。
それ以来、魚だけでなく、虫や動物、特に人間のために命を奪われる家畜の存在についてよく考えるようになった。
もちろん、家畜を飼うのをやめるべきだなどと極端な主張をするつもりはない。このシステムを放棄してしまったら、人類は生きていくことができなくなるだろう。
人間のために奪われる命といえば、動物だけでなく「虫」もかなりの犠牲を払っている。
夏に高速道路や夜道を走ると、車のフロントバンパーが虫の死骸だらけになることがある。
私は今回の旅で、北海道に上陸してからすでに500km以上は運転している。ここへ来るまでに、無意識のうちに数えきれないほどの虫をフロントガラスで轢き殺してきたはずだ。
毎日、おびただしい数の虫が人間の車によって命を落としている。
地球上の生物に「もしどれか一つの種族を絶滅させるとしたらどの生物が良いか」とアンケートを取ったら、満場一致で「人間」が選ばれた、なんていう皮肉めいたフィクションの話をどこかで読んだ記憶がある。
誤解しないでほしいが、こんなことを真剣に考えて、環境活動家になりたいわけでもヴィーガンになりたいわけでもない。
考えたからといって明確な答えが出るわけでもなく、動物が可哀想だというセンチメンタルな気持ちに完全な折り合いがつくわけでもないだろう。
それでも、この広大な自然の中で、命についてただ静かに思考を巡らせてみたかったから、私は北海道に来たのだ。
絶品!猿払名物・ホタテの刺身定食
風呂から上がると、色々と頭を使ったせいか、腹の減りが最高潮に達していた。
生き物への感傷はそれとして、腹は減る。人間の業の深さである。
道の駅内にある「レストラン風雪」ののれんをくぐった。
猿払村といえば、泣く子も黙るホタテの村だ。当然ホタテを食べたい。
メニューには刺身、フライ、カレーなど様々なホタテ料理が並び目移りするが、ここは一番素材の味がわかる王道の「ホタテ刺身定食」でいこう。


美味い。とろけるような甘みと、しっかりとした歯ごたえ。
なんという贅沢だろうか。ご飯をかき込む箸が止まらない。
命に感謝しつつ、あっという間に完食した。
明日に向けてオホーツク海沿岸のルート計画
満腹になって外へ出ると、冷たい雨がシトシトと降っていた。

大急ぎで自分の車に戻り、ドアを閉めて一息つく。
明日もこの調子で雨が降り続くのだろうか。
明日は、ひたすらこのオホーツク海沿岸を南東へ走り続け、一気に網走(あばしり)まで行こうと考えている。
紋別のあたりにいくつか寄りたいスポットがあるので、早朝にここ猿払を出発し、まずは紋別まで一直線に向かおう。
その後、サロマ湖の手前で一旦内陸の方へ折れ、温根湯(おんねゆ)の辺りにも寄り道する予定だ。
総走行距離を計算すると、一日の移動距離としては今回の旅で一番長いものになるだろう。
しかし、今日オホーツク海沿岸を少し走ってみた感覚では、交通量が少なく、景色がダイナミックで開けているため、長時間の運転もさほど苦にはならなそうな気がする。
明日はどんな絶景、どんな生き物たちに出会えるだろうか。
雨音を聞きながら、静かに眠りについた。