ガヤ駅の客引きを無視する
車窓から見える、牛、レンガ、そしてゴミの山。
ガヤの駅周辺は、何だが荒涼としていた。
列車がガヤ駅に停止した。
プラットフォームに降りると、さっそく私めがけてリキシャの客引きが寄って来る。
周りのインド人の乗客たちは、あまり声をかけられていない。
ここに来る外国人は、十中八九ブッダガヤに向かうというのが暗黙の了解なのだろう。
私は事前に、ガヤの駅から少し離れたところでリキシャをつかまえることに決めていた。
駅の近くで客待ちをしているリキシャは、トラブルが多いのではないかと想像していたのだ。
リキシャとのトラブルについて、今までに様々なもので読んでいた。
予約したホテルの名前を告げると、そのホテルは閉業したと嘘をつかれるとか、目的地とは違う所の旅行社に連れて行かれるとか、後は料金を支払う時のトラブルなど。
見た感じ、リキシャはそこら中にいる。
焦ってここで乗る必要はない。
私に寄ってきた客引きが、自分の所のリキシャに私を連れて行こうとする。
「ハウマッチ」と聞いても、それには答えず、いいから付いて来いという素振りをする。
また「ハウマッチ」と聞いても何も言わないので、この人のところはパス。
他の乗客について進む。
また歩いていると、ひっきりなしに声がかかる。
人気者になりたければガヤ駅に来ると良い。有名人になった気分になれる。
全て無視だ。
その後も、腕をつかまれたり(すぐに離してくれた)、「500、400、ファイナルプライス300」と勝手に値段を下げてくる者がいた。
そういう連中は面白いのだが、事前に決めていたルール通りにいこう。全て無視。
とりあえず、列車の他の乗客と同じ方向に歩き続ける。
ブッダガヤ行きのリキシャをつかまえる
道路に出て少し歩いていると、声がかかることはなくなった。
向こうから、古びたリキシャが駅に向かって走って来る。
よし決めた。あれに乗ろう。
私は古いものが好きだ。
リキシャの方を見ていると、リキシャがスピードを緩めて近くに寄ってきた。
運転手は、良い感じのくたびれたおっちゃんだった。
運転手に「ブッダガヤ」と伝えると、運転手は「ボードギヤー」みたいな発音をしていた。
こっちではそういう発音をするのだろうか。
ここで、さあ運転手と交渉開始、、、というふうになるはずなのだが、もう何もかもが面倒くさくなってきていた。
昨日の昼にコルカタのハウラー駅に着き、18時間を駅で座って過ごした。
わけの分からないインド人に話しかけられたり、乗る電車を間違えかけたり、5時間半も電車に乗ったりと、もう面倒事はごめんだった。
おまけに今は腹が痛い。
早くゲストハウスで休みたかった。
運転手が値段を言うので、「オーケーそれでレッツゴー」と言うと、運転手は目を丸くしていた。
値段交渉をしない客なんて珍しいのだろう。
いいんだ。
さあブッダガヤに行ってくれ。
後は任せた運転手。
ところで、こういう非合理的なことをする人間がいるから、経済学は経済の予測ができないのだろう。
経済学は、あくまで人間が合理的に動くという前提の下で、理論が組み立てられると聞いたことがある。
経済学に人間心理を取り入れた、行動経済学という分野もあるらしいが、果たしてどこまで人間の行動をシミュレートできるのか。
人間は得てして、人間の想像を超えた行動をするものだ。
何も悪いことをしていない地下鉄の職員を、勝手に疑ってかかる人間もいるぐらいだ(このことはずっと引きずることにしていた)。
こちらが何もしていなくても、誤解から恨まれることもあるし、逆恨みされることだってあり得る。
まあそれはどうでも良く、リキシャの相場についてだが、私の感覚では、ガヤからブッダガヤまで200~300ルピーが相場のような気がしていた。
後で泊まったゲストハウスの人から聞くと、ガヤからブッダガヤに行くリキシャは、250ルピーで手配できるとのことだった。
外国人が、個人でリキシャに乗るのなら、上手く交渉すれば300ルピーというのが妥当なラインではないか。
リキシャに乗ってブッダガヤへ
ガヤの街中はけっこう混んでいる。
ガヤを少し外れると、道はどんどん田舎道になってきた。
リキシャは、道路の凹凸に合わせてガタンガタンバウンドするが、中々快適。
それほどスピードが出ず、のんびり進んでいく。
大量のバイクが通り過ぎて行った。
外には牛がつながれていたりする。
ブッダガヤまではかなり遠い。
地図で見ても遠く感じる。
ブッダガヤの近辺へ
ブッダガヤの近くまで来た。
この辺りは、かなり多くのリキシャが走っている。
子どもたちがインドカラーの垂れ幕を持っている。
何かのイベントだろうか。
ブッダガヤのメインストリートに来て、運転手が、どこまで行くかと聞いてくる。
私はコルカタにいるときに、ブッダガヤのゲストハウスを調べて見当をつけていた。
ゲストハウスのある通りの近くで、「プリーズストップヒアー」と伝え、リキシャを停めてもらう。
お金を払い、運転手のおっちゃんとはお別れだ。