ハウラー駅に入ってリタイアリングルームを探す
さて、今は昼の12時ごろ。
これから翌朝の6時まで、駅で時間を潰さねば。
そのためにもリタイアリングルームを探そう。
ハウラー駅の内部は、非常に広々としている。
正面から入ると、手前の方に、人々が座ったりしている広い簡易待合スペースがある。
その奥には、いくつもの大きなプラットフォームが、さらに奥に向かって伸びている。
入口から見て右手には、鉄道のチケット売り場やトイレもある。
チケット売り場の辺りには、床に敷物をして、座ったり横になっている人たちがいた。
壁沿いには、いくつもの施設や飲食店が並んでおり、ウェイティングホールと書かれている二基のエレベーターもあった。
ATMや本屋などもある。
さて、どうしよう。
とりあえず、構内をウロウロして総合案内所(エンクワイアリー)を探してみるが、見つからない。
このままリタイアリングルームを探してみるか、それとも他に腰を落ち着けられる場所を探してみるか。
インドの人たちと同じように、チケット売り場前で時間を潰せないかと思い、地べたに座ってみる。
ここはトイレも近いので、時間を潰すのに良さそうだ。
ちなみにトイレは、料金が書かれているところもあるのだが、そこはおそらく大をする場所で、無料の小用のトイレもある。
インドのトイレについては、色々な媒体で色々な紹介文を見てきたので、かなり覚悟していた。
が、実際に入ってみると、思っていたよりきれいだった。
さて、地面に腰を下ろしてみると、床が冷たい。
一応、敷くものは持って来ているのだが、薄いのであまり効果はないだろう。
一時間ほど座っていたが、ここで18時間を過ごすのは無理。
尻が痛いし冷たい。
もっと良い場所を探すことにしよう。
ハウラー駅のウェイティングホールへ
気になっていたのは、ウェイティングホールと書かれた二基のエレベーターだ。
もうリタイアリングルームでなくても、椅子があればどこでも良かった。
エレベーターの片方には、「2nd class」、もう片方は「upper class」と書かれている。
私の場合はどちらだろう。
とりあえず、「2nd class」の方に行ってみよう。
エレベーターで上階まで上がり、ウェイティングホールに入ってみると、受付があり、奥にはたくさんの金属製の椅子が並んでいた。
受付の方を向くと、何かを言われたので、鉄道のチケットを見せてみた。
すると、受付の人は少し思案した後、「カム、カム」と言いながら、私をどこかに連れて行こうとする。
そのまま付いて行き、エレベーターに乗って下の階へ。
今度はupper classのエレベーターに乗り、再度上に向かう。
私を誘導してくれた人は、upper classの受付の人と何かを話し始める。
私にも何かを言ってくるのだが、英語が流暢なのでよく分からない。
「202」と言われたが、これは料金だろう。
「トゥモロー」と言われたので、料金は後払いということだろうか。
二人の顔色を窺いながら中へ入る。
すると、受付の人が追いかけてきた。
やっぱり先払いだよね。
「トゥモロー」というのは、202ルピーで明日までここに居られるという意味なのだろう。
まあとにかく、明日まで時間を潰せる場所が見つかって良かった。
ここで17時間ほどを過ごそう。
ウェイティングホールの様子
ハウラー駅のウェイティングホールは、過ごしやすい場所だった。
まず、部屋は一般用と女性用に分かれている。
一般用を使っている女性もけっこういた。
部屋に入ると、黒いソファがたくさん並んでおり、インド人だけでなく他の国籍の人もそこそこ座っている。
空いている所を探して適当に座る形だ。
ソファは座り心地が良い。
インドとネパールの旅を通して、一番座り心地の良い椅子だったかもしれない。
ソファと、前に座っている人の頭。
写真の奥には、軽食やジュースを売っているスタンドなどがある。
スタンドは、ほぼ24時間営業だ。
ほぼというのは、たまに店員がいなくなるときがあるため。
椅子の近くの柱には、充電のできるコンセントがある。
部屋の後ろにはトイレやシャワールームまであり、潰そうと思えば、ここでいくらでも時間を潰せそうだ。
片言のインド人に絡まれる
ウェイティングホールのソファに座り、一息ついた。
チケット売り場の地べたとは、大違いに快適だ。
あそこで17時間を過ごすのは無理だった。
今回は、計画ミスといえば計画ミス。
これなら明日の早朝に宿を出て、タクシーでも拾った方が良かったか。
まあ結果論だ。
朝まで時間を潰せる場所が見つかったので、良しとしよう。
椅子に落ち着いて日記を書いていると、左の方にいたインド人から声をかけられた。
ところが、相手の英語がものすごく片言なので、何を言っているか分からない。
ウェイティングホールの受付の人の英語は流暢で分からなかったし、今度は片言なのでさっぱり分からない。
私と同じレベルの人はいないものか。
何とか聞き取ったところによると、どうやら、何故ノートを書いているのかと聞きたいらしい。
こちらも片言の英語で、単語を並べながら、「あったことを記録し、家族に見せるためだ」というようなことを伝えるが、中々分かってもらえない。
彼は、私がノートに書いていたことを写真に撮り始め、今度はビザを見せろと言ってくる。
何故ビザを見せなければいけないのか。
彼は政府の人間で、私がスパイ活動をしているとでも勘違いしたのか。
何にしても、面倒くさくなったので、「ビザはカバンの奥にしまってあり、取り出すことができない」と伝える。
それでも彼は粘っていたが、こちらが相手にしなくなると、ウェイティングホールを出てどこかに行ってしまった。
何だったのだろう。
面倒くさい男だ。
勘違いから警察を呼ばれたりしないと良いのだが。
売店でチャイを買ったりする
それからまた、ひたすら座って時間を潰した。
前の方を見ると、初老の欧米人が、スケッチブックと色鉛筆で売店をスケッチしていた。
こういう時間の潰し方もあるのか。
今後の参考にさせてもらおう。
しばらくウトウトしたり、ボーッとしたり、売店で買ったチャイを飲んだりして過ごす。
売店では、メニューにチャイがあるかどうか分からなかったのだが、どこの店も大体チャイがあるだろうと思っていたので、「チャイプリーズ」と言ってみると、紙コップにチャイを入れてくれた。
このチャイは、インドとネパールで飲んだ中で一番システマティックなチャイだった。
というのも、機械で淹れているインスタントのチャイなので、何度飲んでも同じ味になる。
日本で飲む、スティックのミルクティーと同じ味だ。
スナックも買ったが、これは、日本で食べるベビースターを辛くしょっぱくしたような、インド風の味だった。
駅の構内で腕をつかまれる
それから、隣に大人数の家族連れが来た。
大人数で家族構成が分からず、いくつかの家族が合同で来ていたのかもしれない。
子どもたちがわちゃわちゃしている。
しばらくすると、その家族連れから席を移動するように頼まれた。
大人数が固まって座れるような場所が、私の周りしかなかったので、これは仕方ない。
喜んで席を譲る。
私も歩きたい気分になっていたので、これを機にウェイティングルームを出て、駅の一階に行ってみることにした。
何か食べ物でも食べてこよう。
薄暗い、一階の大広間に降りる。
売店に行ってみると、何人かのインド人が店の前で注文していた。
後ろで並んで待っていると、私と前のインド人たちとの間に、他のインド人が入って来る。
日本人的な列の並び方は、インドの人からしたら、列に並んでいないとみなされてしまうわけだ。
ここで食べ物を買うのはあきらめた。
小心者の私には無理だ。
他に飲食店はいくつもあるが、何だか面倒くさくなってしまった。
後で、ウェイティングルームの売店でパンを買うことにしよう。
ウェイティングルームに戻る前、チケット売り場近くのトイレに行っておくことに。
歩いていると、黒いスーツの、首から何かの証明書を下げた男たちがいた。
その前を通りがかった時、男たちから呼び止められる。
また客引きかと思ったが、様子が違うような気もする。
とりあえず無視して通り過ぎると、今度は腕をつかまれた。
これは無視してはダメなやつだ。
チケットがどうのこうの言われたので、小さいバッグに入れていたチケットを見せ、解放された。
たぶん、私が飲食店を探してあっちこっちをウロウロしていたので、不審に思っていたのだろう。
鉄道警察か何かだったに違いない。
さらに時間を潰す
ウェイティングルームに戻った。
売店でチャイとパン、クッキーを買う。
パンはチキンが入っており、美味い。
購入するとレンジで温めてくれた。
パンとチャイを食べ終え、売店前のゴミ箱にゴミを捨てに行く。
売店の近くには扉があり、その先に何があるか気になっていた。
ゴミを捨てるついでに、扉の先を見に行こう。
ちなみに、ウェイティングルームの正面の壁には、荷物の管理は自己責任でと書いてある。
私は席を立つとき、荷物を自転車のチェーンで椅子につなぎ、ファスナーにワイヤーロックをかけていた。
周りには、そこまでしている人はいなかったのだが、まあ用心するに越したことはないだろう。
売店近くの扉を出ると、そこはバルコニーになっていた。
眼下には、駅の正面の通りを見渡すことができ、眺めが良い。
席に戻ると、電車の発車時刻まであと7時間ぐらいだ。
何だかんだ時が経つのは早い。
23:00ごろ、座席を動かしながら清掃が始まった。
座席が動かされてみると、下にあったペットボトルや菓子の袋が出るわ出るわ。
23:30、前の方でインド人の集団が騒いでいる。
久々の再開なのか、肩を叩いたり抱き合ったりしていた。
このぐらいの時間だと、さすがに客は少ないのだが、騒々しさは変わらない。
天井のファンからの風が寒い。
これさえ無ければ快適なのだが。
隣のおばあちゃんとおじいちゃんに寝るのを妨げられる
00:00を過ぎ、眠くなってきた。
今寝ると、6:45の電車を寝過ごしてしまいそうで、寝るのがためらわれる。
こんなに待ったのに、もし列車を乗り過ごしてしまったら、きっと心が折れてしまうだろう。
その時はガヤに行くのをあきらめ、コルカタから帰国便に乗って日本に帰ろう。
やっぱり眠い。
寝てしまおうか。
私は左端に座っているのだが、右の席が空いており、それを使えば横になって眠れる。
そんなことを考えていると、2つ右の席に来たおばあちゃんが、私の右の席に荷物を置いてきた。
図にすると下のようになる。
左端〔私〕〔おばあちゃんの荷物〕〔おばあちゃん〕〔おばあちゃんの連れ〕
私は、自分の席と右の席を使って横になろうと思っていたのだが、右の席をおばあちゃんの荷物にふさがれてしまったわけだ。
右の席の足元に荷物を置いていたので、右の席はふさがれないだろうと油断していた。
他の席もまばらに空いているのだが、ざっと見た感じでは、2つ連続で空いている所が見当たらない。
仕方ない。
席に座ったまま少し眠ろう。
寝たり起きたりを繰り返しながらウトウトしていると、おばあちゃんと連れがどこかに行ってしまった。
これでようやく、ゆっくり眠れる。
そこにすかさず別のおじいちゃんがやってきて、私の右の席も含め、3つか4つぐらいの席を使って寝始めた。
もう横になって寝るのはあきらめよう。
お年寄りは大切に、だ。