ウェイティングホールを出る
今は早朝の5:00。
前日の昼の12:00ごろから、ずっとハウラー駅のウェイティングホールにいたのだった。
椅子に座ったまま17時間ほどを過ごしたが、あっという間だった気もするし、ものすごく長かった気もする。
もうこんなスケジュールを組むのはやめよう。
いくら心配性だからとはいえ、これでは体がもたない。
さて、ウェイティングルーム内の電光掲示板を確認する。
列車の出発は、6:45。
出発まで2時間を切ったので、そろそろ私の乗る列車が表示されないだろうか。
そうして掲示板を見ていると、私の乗るヴァンデバーラトエクスプレスが、掲示板に表示されていた。
時間が5時台になっているが、これはハウラー駅への到着時間ということだろうか。
5時台に到着して、6:45に出発するということなのだろう。
電光掲示板やスマホで確認すると、プラットフォームは6番らしい
早速ウェイティングホールを出て、プラットフォームに向かう。
電車を乗り間違える...
6番のプラットフォームに行くと、ちょうど電車が来るところだった。
電車の表示を見ると、ヴァンデバーラトエクスプレスと出ている。
出発よりだいぶ早い到着時間だ。
チケットに書いてある、C10(10番車)の70番席に座る。
しばらく座っていると、続々と客が乗り始めてきた。
すると、2人連れの女の人が来て、私に向かって「そこは私の席だ」と言ってきた。
私も自分のチケットを渡して見せ、ここは私の席だと伝える。
その人たちは一旦引いたのだが、少しすると、「やっぱりそこは私たちの席だ」と言ってくる。
こういう場合、私が間違っている可能性が高い...
地下鉄の時もそうだった。
自分を信用しない方が良い。
席を立ち、確認しに電車を出る。
電車を乗り直す
プラットフォームに出ると駅員がいたが、質問しようとしても、忙しいのか断られてしまった。
どうしたものか。
電車の電光表示に、電車番号が書かれていた。
チケットにも番号が書かれていたので、照会してみると、番号が一番だけ違っていた。
やっぱりこの電車ではなかったのだ。
事前にアプリで確認したとき、この電車は表示されなかったので、ヴァンデバーラトエクスプレスは、私の乗る6:45のものしか無いと思い込んでいた。
電光掲示板やアプリで、私の乗る電車のプラットフォーム番号を再度確認してみると、やっぱり6番で良いようだ。
では、私の乗る電車は、この電車が出発した後に来るのだろうか。
不安だが、ここで待ってみよう。
停まっていたヴァンデバーラトエクスプレスが出発し、しばらくすると、またプラットフォームに人が集まってきた。
そして6:45の30分ぐらい前、またヴァンデバーラトエクスプレスがやってきた。
車体番号を見ると、チケットの物と一致している。
これが私の乗る電車に違いない。
本当に電車が来るのか心配で、心労がピークだった。
ここまででだいぶ疲れた。
インドの前評判として、電車が遅れるとか、予定通りに着かないとか、そういうことを聞いていたので、警戒してばかりだった。
今回インドで乗った電車は、全て定刻通りに発着した。
電車に乗り込み、自分の座席へと向かう。
周りの乗客との関わり
自分の席に向かうと、知らない人が座っている。
先ほどとは逆のケースだった。
男が一人に女が二人いて、三人は家族連れのようだった。
女の人が座っている席が、私の席だった。
チケットを出しつつ、そこは私の席だと伝えると、男が席を交換してくれと言ってくる。
それは別に構わなかったが、車掌がチケットを確認しに来たときなど、後から面倒なことになりそうだと思いつつ、席を交換してあげた。
しばらくすると、私の隣に若い男のインド人が座った。
彼は私を日本人だと見て、流暢な英語で話しかけてくる。
こちらは流暢な英語はさっぱり分からないので、曖昧な受け答えをしたり、英語はよく分からんと伝えたりするのだが、彼は手を緩めてくれない。
何とか聞いたところによると、彼は大学で工学系の勉強をしているらしい。
私もそっち系の勉強をしていたと言うと、パソコンを取り出して論文を見せてくれた。
数式もあったが、全く見たことのない式だったので、彼の分野も分からなかった。
電車が発車する。
このまま5時間半乗っていれば、ガヤに到着する。
電車が発車して少しすると、車掌が回ってきた。
スーツを着た年配の人だ。
一目で偉い人だと分かる。
車掌が私に何か言ってくるのだが、よく分からないので自分の名前を伝えると、隣の若い男が、「チケットを出すよう言われている」のだと教えてくれた。
チケットを車掌に渡すと、車掌はチケットに確認済みのサインをし、私に返してきた。
席を変えたことは、特に何も言われなかった。
少しして、隣の若い男はパソコンとにらめっこしながら勉強を始めた。
ヴァンデバーラトエクスプレスの車内食
電車が走り出してしばらくしたが、外は霧がかかっている。
あと5時間ほどでガヤに着く。
電車の職員が、車内食の確認をしに来た。
席を変えていたので職員が戸惑っている。案の定だ。
私は車内食を注文していたが、席を交換した家族連れは、車内食を注文していなかったのだ。
席を交換してくれと言ってきた男に、事情を説明させた。
さて、車内食。
美味そうだ。
前にカフェで食べたパンは、固く、食べるのが辛かった。
このパンは日本で食べるのと同じような食感だった。
ジャムも付いており、美味しく食べられる。
右のポテトとグリーンピースも美味い。
マフィンも付いてきたが、それは携帯食として持って行くことにした。
ガヤに到着
車内食を楽しみつつ、外の景色を眺める。
この辺りの景色はアフリカのサバンナを連想させる。
広い平原が続く。
時折、建物がポツポツと。
川のそばで何かを干していた。
列車がどこかの駅に停まり、私の隣の若い男が降りていった。
他の乗客が入って来るが、けっこう自由に席を移動していた。
子どもが歩き回り、近くの大人たちに構われている。
そうこうしているうち、列車がガヤのそばに来たようだ。
ガヤ駅の客引きを無視する
車窓から見える、牛、レンガ、そしてゴミの山。
ガヤの駅周辺は、何だが荒涼としていた。
列車がガヤ駅に停止した。
プラットフォームに降りると、さっそく私めがけてリキシャの客引きが寄って来る。
周りのインド人の乗客たちは、あまり声をかけられていない。
ここに来る外国人は、十中八九ブッダガヤに向かうというのが暗黙の了解なのだろう。
私は事前に、ガヤの駅から少し離れたところでリキシャをつかまえることに決めていた。
駅の近くで客待ちをしているリキシャは、トラブルが多いのではないかと想像していたのだ。
リキシャとのトラブルについて、今までに様々なもので読んでいた。
予約したホテルの名前を告げると、そのホテルは閉業したと嘘をつかれるとか、目的地とは違う所の旅行社に連れて行かれるとか、後は料金を支払う時のトラブルなど。
見た感じ、リキシャはそこら中にいる。
焦ってここで乗る必要はない。
私に寄ってきた客引きが、自分の所のリキシャに私を連れて行こうとする。
「ハウマッチ」と聞いても、それには答えず、いいから付いて来いという素振りをする。
また「ハウマッチ」と聞いても何も言わないので、この人のところはパス。
他の乗客について進む。
また歩いていると、ひっきりなしに声がかかる。
人気者になりたければガヤ駅に来ると良い。有名人になった気分になれる。
全て無視だ。
その後も、腕をつかまれたり(すぐに離してくれた)、「500、400、ファイナルプライス300」と勝手に値段を下げてくる者がいた。
そういう連中は面白いのだが、事前に決めていたルール通りにいこう。全て無視。
とりあえず、列車の他の乗客と同じ方向に歩き続ける。
ブッダガヤ行きのリキシャをつかまえる
道路に出て少し歩いていると、声がかかることはなくなった。
向こうから、古びたリキシャが駅に向かって走って来る。
よし決めた。あれに乗ろう。
私は古いものが好きだ。
リキシャの方を見ていると、リキシャがスピードを緩めて近くに寄ってきた。
運転手は、良い感じのくたびれたおっちゃんだった。
運転手に「ブッダガヤ」と伝えると、運転手は「ボードギヤー」みたいな発音をしていた。
こっちではそういう発音をするのだろうか。
ここで、さあ運転手と交渉開始、、、というふうになるはずなのだが、もう何もかもが面倒くさくなってきていた。
昨日の昼にコルカタのハウラー駅に着き、18時間を駅で座って過ごした。
わけの分からないインド人に話しかけられたり、乗る電車を間違えかけたり、5時間半も電車に乗ったりと、もう面倒事はごめんだった。
おまけに今は腹が痛い。
早くゲストハウスで休みたかった。
運転手が値段を言うので、「オーケーそれでレッツゴー」と言うと、運転手は目を丸くしていた。
値段交渉をしない客なんて珍しいのだろう。
いいんだ。
さあブッダガヤに行ってくれ。
後は任せた運転手。
ところで、こういう非合理的なことをする人間がいるから、経済学は経済の予測ができないのだろう。
経済学は、あくまで人間が合理的に動くという前提の下で、理論が組み立てられると聞いたことがある。
経済学に人間心理を取り入れた、行動経済学という分野もあるらしいが、果たしてどこまで人間の行動をシミュレートできるのか。
人間は得てして、人間の想像を超えた行動をするものだ。
何も悪いことをしていない地下鉄の職員を、勝手に疑ってかかる人間もいるぐらいだ(このことはずっと引きずることにしていた)。
こちらが何もしていなくても、誤解から恨まれることもあるし、逆恨みされることだってあり得る。
まあそれはどうでも良く、リキシャの相場についてだが、私の感覚では、ガヤからブッダガヤまで200~300ルピーが相場のような気がしていた。
後で泊まったゲストハウスの人から聞くと、ガヤからブッダガヤに行くリキシャは、250ルピーで手配できるとのことだった。
外国人が、個人でリキシャに乗るのなら、上手く交渉すれば300ルピーというのが妥当なラインではないか。
リキシャに乗ってブッダガヤへ
ガヤの街中はけっこう混んでいる。
ガヤを少し外れると、道はどんどん田舎道になってきた。
リキシャは、道路の凹凸に合わせてガタンガタンバウンドするが、中々快適。
それほどスピードが出ず、のんびり進んでいく。
大量のバイクが通り過ぎて行った。
外には牛がつながれていたりする。
ブッダガヤまではかなり遠い。
地図で見ても遠く感じる。
ブッダガヤの近辺へ
ブッダガヤの近くまで来た。
この辺りは、かなり多くのリキシャが走っている。
子どもたちがインドカラーの垂れ幕を持っている。
何かのイベントだろうか。
ブッダガヤのメインストリートに来て、運転手が、どこまで行くかと聞いてくる。
私はコルカタにいるときに、ブッダガヤのゲストハウスを調べて見当をつけていた。
ゲストハウスのある通りの近くで、「プリーズストップヒアー」と伝え、リキシャを停めてもらう。
お金を払い、運転手のおっちゃんとはお別れだ。
タラゲストハウスへ
ブッダガヤの大通りから脇道に入り、目を付けていた、Tara Guest House(タラゲストハウス)のある通りを行く。
田舎道だ。コルカタとは全然違う。
イヌや牛を飼っている家がある。
タラゲストハウスに来た。青を基調とした外装が美しい。
真っすぐ突き当りまで行くと、タラゲストハウスの食堂があり、その左手に受付がある。
ちなみに、左の赤いゲートを行くと、違うゲストハウスがある。
ちなみに、ゲストハウスの目の前はこんな感じ。
牛がつながれている。
タラゲストハウスの青を見ていると、バンコクで泊まったロフテルステーションを思い出す。
あそこも青を基調としたホステルで、中々良い所だった。
タラゲストハウスはどんなところだろう。
タラゲストハウスにチェックイン
受付は小さなスペースで、誰もいなかった。
外に出てみると、食堂の方に人がいる。
そっちに行ってみよう。
声をかけてみると、席に座って待つよう言われ、水を出された。
こういう親切が心にしみる。
オーナーと電話で連絡を取ってくれるも、電話の通信状況が悪く、何を言われているかよく分からなかった。
おまけにこちらは、英語がさっぱりときている。
そうこうしていると、ゲストハウスの若いマネージャーが来てくれて、部屋を見せてもらえることに。
先ほどの道路の渋滞を見て、ゲストハウスはどこも一杯なのではと思っていたので、泊まれる部屋があると分かりホッとする。
部屋も綺麗で掃除が行き届いている。
ホットシャワーも24時間出るそうだ。
おまけに、値段もコルカタのゲストハウスより安かった。
言うこと無し。
お金について聞くと、払うのはいつでも良いと言われた。
コルカタでもそうだったので、インドのゲストハウスはどこもそういう形式なのだろうか。
私はこういうのを気にするタイプなので、すぐに払っておくことにした。
とりあえず3日泊まりたいと伝え、料金を払う。
そういえば、バンコクではどこも前払いだったな。
国や地域、そのゲストハウスごとに違うのかもしれない。
まだ部屋の準備ができていないそうなので、先ほどの食堂に戻り、チャイをもらう。
雰囲気も良いしサービスも良い。
ここに来て良かった。
ブッダガヤ一日目の終わり
部屋の準備ができたそうなので、部屋に行ってくつろぐ。
ちなみに、鍵はコルカタのゲストハウスと同じく、南京錠を部屋の外からかけるタイプだった。
部屋から見える景色。
シャワーと洗濯を済ませ、人心地着いた。
1日ぶりのシャワーだった。ホットシャワーの温度もちょうど良い。
やはりボディーソープなどは付いていないので、持って来ていたものを少し使った。
布団がフカフカで、何となくベッドに入ると、そのまま夜まで寝てしまった。
そういえば、外はクラクションも聞こえないし、犬の吠え声ぐらいしか聞こえてこない。
静かだ。
空気も綺麗な気がする。
ここでコルカタの疲れを癒していこう。
今日はもう外に出ず、これまでに貯めた食料を食べる。
明日からは本格的にブッダガヤを歩く。
果たしてどんなことが待ち受けているだろうか。