七日目の朝
日の出とともに起床。
昨日はあまり眠れなかったが、考えがまとまったのと、実家の方で心配事が一つ減り、すっきりした目覚めだ。
それにしても暑い。
昨日、地図を見ていて思ったのだが、ここ温根湯は旭川に近い。
国道39号を少し行くと層雲峡、そして旭川に出る。
旭川は4日ほど前に通ったのだった。
旭川を出てからかなりの距離を走ったので、よほど遠くまで来たと思っていたのだが、海沿いをぐるっと回って近くまで来ていたようだ。
今日はいよいよ網走へ。
どんなところか楽しみだ。
まずは北見に向かって車を走らせよう。
道は相変わらずタマネギ畑に囲まれ、遠景には山や丘。
北見ハッカ記念館へ
北見市街に着いた。
北海道の地方都市らしい街並みだ。
2車線の主要国道沿いに店が立ち並ぶ。
脇道も2車線になっているが、国道沿いとはうって変わって家が並び、店も車も少なくなる。
脇道に入ると、その町の本来の姿が見えてくる気がする。
北見ハッカ記念館に着いた。
ここは無料で入ることができる。
無料とは思えない、素晴らしい展示だった。
2階建てになっており、まずは1階を巡る。
ここではハッカと人との歴史について知ることができる。
ハッカは古代から人々に利用されてきた。
日本では平安時代の文献から、ハッカの記述が見られるそうだ。
ハッカ製品を作る工程が、写真とともに解説されている。
私は化学があまり得意ではなかったが、こういう試験管が並んでいるのを見るのは楽しい。
これは製品の検定をする際のサンプルだそうだ。
とても無料とは思えない、充実した展示だ。
会館の2階へ
2階の展示を見に行く。
2階には、これまでに作られてきたハッカ製品の見本が並んでいる。
香りのサンプルもある。
ハーブガーデンへ
記念館から出て、外のハーブガーデンへ。
記念館の隣に別館があるので、そちらも見に行く。
様々なハーブが植えられている。
ハーブティーが飲みたくなってきた。
以前、ポンパドールのハーブティーをよく飲んでいたものだ。
薄荷蒸留館へ
別館の薄荷蒸留館へ。
ここでは新旧の蒸留器具を見ることができる。
蒸留器具の解説も詳しい。
無料なのが申し訳なくなる。
こちらの別館では、お土産も買うことができる。
ハッカ羊羹やハッカ脳を購入した。
ハッカ脳というのは、ハッカを生成するときにできる結晶だ。
箱の中に説明書きがあるが、色々なことに使えるようだ。
ハッカの良い香りがするので、布の袋に入れて吊るしておくと消臭剤になる。
ハッカ記念館を出て北見市街を後にする。
道の駅 メルヘンの丘めまんべつへ
北見ハッカ記念館を出て、さらに国道39号を北へ。
北見市街では北見ナンバーの車ばかりだ。
たまに釧路・帯広・札幌ナンバーを見かける。
道外ナンバーを全く見かけず、疎外感を味わう。
道なりに進み、女満別空港を通り過ぎる。
女満別は「めまんべつ」と読む。
道の駅 メルヘンの丘めまんべつに到着した。
車が多いものの、やはり道外ナンバーをほとんど見なかった。
土産物と、ハスカップパフェを購入。
一度ハスカップを食べてみたかった。
ラズベリーのようだが、けっこう酸っぱい。美味い。
ローズガーデンだ。
やはり、花はもう少し経った頃が見ごろなのだろう。
メルヘンの丘へ
目的地、メルヘンの丘は、道の駅から歩いてすぐのところにある。
ここがメルヘンの丘。
畑の先に数本の木が立っている。
メルヘンの丘近くの路肩に、何台も停められる駐車場もあった。
奥の木も良いけれど、手前の畑も良い味を出している。
植えられているのは何なのだろう。
メルヘンの丘は、見学できる場所から見て西にある。
方角的に、メルヘンの丘の方に夕日が沈むのではないか。
夕方の景色も見てみたいものだ。
道の駅の車に戻った。
博物館 網走監獄へ
メルヘンの丘を出て北へ。
途中、左手に網走湖を見ながら進む。
網走市街の手前で道を右に折れ、博物館 網走監獄に着いた。
平日だが、駐車場にはたくさん車が停まっていた。
ここに来るまでの道で、道外ナンバーを全く見なかったのが嘘のように、ここは道外ナンバーだらけだ。
入り口の鏡橋を渡る。
網走監獄は、漫画ゴールデンカムイの作中で重要な舞台として登場する。
放射状に広がる舎房などが有名であり、今回の北海道一周で、ぜひ訪れてみたいと思っていた。
今は博物館になっており、もちろん囚人はいない。
網走刑務所自体は現存しており、ここの博物館から少し北に行ったところにあるようだ。
博物館では、旧網走刑務所の歴史的建造物を見学することができる。
重要文化財として国から指定されている建物も多い。
受付を済ませて内部へ。
網走監獄の中へ
監獄といえば、重い雰囲気の場所を想像していた。
案に相違し、手入れされた花壇が美しく、明るい、開放的な雰囲気だ。
右にいるのは人形だ。
受付でもらったパンフレットに地図が付いているのだが、見どころが非常に多い。
全部をゆっくり回ると半日がかりになりそうだ。
地図とにらめっこしながら、一つ一つ建物を回る。
庁舎から裁判所
まずは国指定重要文化財の庁舎から。
ここでは建物の構造や歴史についての展示がある。
展示が多く、ゆっくり見ていると、ここだけでもかなり時間がかかる。
小川が流れ、監獄とは思えない雰囲気だ。
北海道で何度も見たルピナスの花。
次は職員官舎へ。
博物館内では、至る所に人形が展示され、建物が使われていた当時の雰囲気を感じることができる。
ニポポ人形。
網走刑務所の受刑者が作成しているそうだ。
後で一つ購入した。
釧路地方裁判所、網走支部の復元展示。
建物内では、単独法廷・合議室・合議法廷などを見ることができる。
この裁判所の建物だけでも、展示が多く、見て回るのに時間がかかる。
備品は、建物が使用されていた当時の物が使われているそうだ。
休泊所から監獄歴史館
裁判所を出て休泊所へ。
ここは囚人たちの休泊所だ。
刑務所内にあった休泊所ではなく、刑務所外で作業をする際に囚人たちが組んだ、簡易的な休泊所だそうだ。
寝床も自分たちで確保しなければいけなかった。
耕転庫や漬物庫。
囚人たちがしていた農作業の様子を知ることができる。
旧網走刑務所の囚人たちにより、かなりの面積の土地が開墾されたそう。
この次に監獄歴史館というところを見学した。
建物内の全部だったか一部だったかが撮影禁止になっていたので、写真を撮っていない。
館内では、監獄や囚人にまつわる歴史について学ぶことができる。
中央道路の開削
歴史館の中で印象に残ったのは、中央道路開削の話だ。
明治時代の1891年、網走から旭川までの約160kmを、囚人たちが開削して道を造ったそうだ。
自動車が日本で普及し始めたのは戦後。
1891年に重機などあるはずもなく、全て人力でやらなければならなかっただろう。
約8ヶ月に渡る開削工事で、囚人たちに多数の犠牲者が出たという。
原野を開削するのだから、害虫や熊に出くわすこともあっただろうし、食料や寝床の確保などもままならなかったに違いない。
時代背景的に、北海道の開拓を急がねばならなかったことに加え、今よりも囚人の権利が薄かった時代だからこその出来事だろう。
いくぶん昔のことであり、展示の文章を読んでも想像がしにくいが、当時使われていた足かせなどが展示されており、凄惨さの一端が垣間見えた。
いくら囚人とはいえ、何ともむごい話だ。
ちなみに、中央道路は今でいう国道333号か国道39号のどちらかの前身かと思っていたが、北見市のページによればそうではないようだ。
現在の国道や道道に完全に一致しているわけではなく、各道路を少しずつなぞるような形の道だったらしい。
二見ケ岡刑務支所
次は博物館の端にある、二見ケ岡刑務支所へ。
二見ケ岡刑務支所は、旧網走刑務所の支所であるが、網走刑務所農作業の先導的施設として作られたそうだ。
旧網走刑務所よりも開放的な施設であり、今で言う模範囚がここに移され、社会復帰に取り組んだそう。
何だか小学校を思い出す。
刑務所の支所なので、食堂や炊場など、生活に必要な設備が一通りそろっている。
2階へ。
ここは何の部屋だろう。
刑務支所なので、当然ながら居房もある。
そして教誨堂も。
旧網走監獄の舎房
二見ケ岡刑務支所を出て、真っすぐ道なりに進む。
すると大きく特徴的な建物が見えてくる。
ここが有名な、旧網走監獄の舎房だ。
中央の見張り所から、放射状に5本の舎房が伸びている。
この特徴的な構造により、中央の見張り所から、全ての監房を見渡すことができるようになっているのだ。
5本の腕をすべて見学することができる。
光の入り方が良く、とても良い写真が撮れる。
扉の開いている房があり、中を見られるようになっている。
房の中もそれぞれ違うようだ。
静謐な場所だ。
監獄だと知らなければ、芸術作品だと思ってしまいそうな建物だ。
網走監獄の出口へ
舎房を見終え、また道なりに進む。
最初に入った庁舎の背中が見える。
ここは浴場だ。
独居房。
教誨堂。
出口まで来た。
とても充実した展示だった。
物産館で、店員としばらく世間話をした。
宗谷岬以来のちゃんとした会話だった気がする。
土産物をたくさん買い、網走監獄を後にした。
道の駅 流氷街道網走へ
博物館 網走監獄を出て、網走市街地にある、道の駅 流氷街道網走へ向かう。
網走は交通量も町の大きさも、何もかもが調度よいスケールに感じる。
まずはここで昼飯にしよう。
ホタテラーメン。
北海道に来て初のラーメンだったかもしれない。
塩味。
久しぶりのラーメンに満足した。
道の駅の周囲を歩く。
今日は気温は高いが、風が強い。
体感温度はぬるいぐらいだ。
明日の計画と準備
まだ早い時間なのだが、今日の観光はここまでにする。
昨日は猿払から、留辺蘂の温根湯温泉まで長い距離を走ったのだった。
それもあって、今日はあまり長い距離を移動する気がなかった。
明日はいよいよ知床に行く。
クルーズ船に乗ったり、色々と見て回る予定のため、体力を温存しておきたかった。
知床は半島の一部が世界遺産に登録されており、写真でしか見たことがないが、圧倒的なスケールの大自然を堪能できるようだ。
今回の北海道一周で、一番楽しみな場所だった。
クルーズ船を予約しようと電話したが、明日は予約しなくても乗れるそうだ。
さて、明日に備えて色々と用事を済ませておこう。
おんねゆ温泉で買った鮭めーるを記入し、郵便局で出した。
コインランドリーにも行っておく。
前回は稚内でコインランドリーに寄ったのだった。
持ってきた衣類の量から、大体、2~3日に一回コインランドリーに寄っている。
ランドリーを使用するには一回1000円かかる。
もっと着替えを持ってきておけば、節約になっただろう。
車なので、衣類は大した荷物にはならない。
後はガソリンスタンドへ。
ガソリンも毎日のルーティーンが決まってきた。
一日一回、半分も減らない頃合いにスタンドへ寄り、満タンで給油する。
大体いつも2000円ぐらいになる。
北海道を車で移動するときは、ガソリンに注意とよく言われるが、これまでに一日一回の給油で困ったことはない。
どの町にも一つはスタンドがあり、適当に給油していればガソリンが底をつくことはなかった。
今日の回想
今日は移動距離が少ない。
温根湯を出発し、北見のハッカ記念館へ。
それからメルヘンの丘。
網走監獄と回ったのだった。
土産物もたくさん購入。
ハッカ記念館で買ったハッカ羊羹やハッカ脳
羊羹は後で食べよう。
ハッカ脳はハッカの結晶だ。
臭い消しのため、布に包んで車の中に吊るしておいた。
網走刑務所の土産。
出所祝いのタオルやニポポ人形。
つい鹿笛も買ってしまった。
網走には観光地も多く、もっとたくさん見て回りたかったが、まあこんな日があっても良いだろう。
今度は流氷の季節に来てみたいものだ。
今日は最高気温が29℃。
一転して、明日の知床は19℃ぐらいになるらしい。
上着をカバンに入れておこう。
テレビでやっていたのだが、今日で八雲町の自動車事故からちょうど一年になるそうだ。
高速バスと家畜運搬車が正面衝突し、多数の死者・重軽傷者を出した事故だ。
家畜も何頭も亡くなっている。
私の旅も、行程のおよそ半分まで来たはずだ。
事故を起こさずに完了したいものだと思う。
さて、今日は早めに寝よう。