長年の夢だった、北海道一周の一人旅へ
車で北海道を一周することにした。
これまで北海道には足を踏み入れたことがなかった。しかし、何年も前からずっと訪れてみたいと焦がれていたのだ。
それも、自分のペースで車を走らせる、自由気ままな一人旅で。
広大な北の大地を一周するには、かなりの日数を要するだろう。
会社員時代は到底無理な相談だったが、最近、わけあって無職になったばかりだ。
仕事を辞めた後、もろもろの野暮用を片付け、ようやく自由な時間がとれるようになった。
まだ心配事がないわけではない。しかし、そう言っていたら、いつまで経っても行動できなさそうだ。
勢いに任せて新日本海フェリーの窓口へ足を運び、新潟から小樽行きのチケットを購入した。
今回利用するのは、プライベート空間が確保されたツーリストAクラスだ。

北海道に到着して何をするのか、細かく決まっているわけではない。
いくつか訪れてみたい名所があり、あとは「なんとなく一周してみたい」とぼんやり思っているだけだった。
事前にガイドブックを読み込み、行く場所とルートの当たりだけは付けてある。

あとは現地へ赴き、心赴くままに回ってみたいところを巡ろうと思う。
新潟港のターミナルで「あざれあ」乗船を待つ
チケットを手にしてから、期待と不安が入り交じる日々を過ごした。
あっという間に出航当日を迎える。
昼の出航に向け、愛車を走らせて新潟港のフェリー乗り場へ向かった。
ターミナルに到着すると、停車位置などが詳しく書かれた案内用紙を渡された。

フェリーに乗る際は、専用の駐車場でしばらく待機することになる。
奥に見える巨大な船体が、今回乗船するフェリーだ。

間近で見ると、圧倒されるほど大きい。
船体には「あざれあ」の文字が刻まれている。

左側に見える、あの青いタラップから船内へと車を進めるのだろう。

いざ乗船!小樽までの長い船旅に備える
乗船までの待ち時間が、ひどく長く感じる。
今日は気温が高く、エンジンを切った車内はなかなかの暑さだ。
平日だというのに、思っていた以上にフェリーを待つ車が多い。
観光目的の旅行者だろうか。
ナンバープレートを眺めると、関東圏から来た車がほとんどを占めていた。
関東からここ新潟港まで車で走り、そこからフェリーで北海道へ向かうのが、車中泊やツーリングのメジャーなルートなのかもしれない。
そんなことを考えながら時間をつぶしていると、いよいよ乗船の合図が出た。
自然と気が引き締まる。
係員の無駄のない指示に従い、ゆっくりと車を進ませる。
タラップに入る手前で窓越しにチケットを見せ、QRコードを読み取ってもらった。

船内の車両甲板は驚くほど広く、車が3台並列で停車できるようになっている。
ここでも係員が丁寧に誘導してくれるため、焦ることなく落ち着いて車を停めることができた。
エンジンを切り、車を出て客室フロアへと向かう。

出航後、翌朝小樽に到着するまで、安全上の理由から車には一切戻れない。
そのため、あらかじめ船内に持ち込む荷物をしっかり吟味しておく必要がある。
・常用している薬
・着替え(特に暑い時期は必須)
・入浴用のタオル
・暇つぶし用の本やタブレットなど
最低限、これらを持って上がると安心だろう。
船内で入浴もできるので、スパバッグを用意しておくのもおすすめだ。

他に、衣類収納などにトラベルポーチもあると便利だ。
日本海を進むフェリーからの絶景
現在の時刻はお昼の12:00。小樽港への到着は翌日の早朝4:30を予定している。

まずは指定されたツーリストAの自席に荷物を置き、身軽になってから展望デッキへと向かった。
船内を歩くと、ちょっとしたアスレチック・ジムまで完備されている。


とはいえ、やはり出航の瞬間は、潮風を感じるデッキから外を眺めていたいものだ。
手すりによりかかって待っていると、突然、腹の底に響くような大きな汽笛が鳴り響き、思わずドキッとする。
いよいよ出航の時だ。


新潟西港の長く伸びる堤防が横たわっている。



力強いエンジン音とともに、フェリーが港からどんどん離れていく。

海面へ目をやると、サゴシがナブラを立てて群れているのが見えた。


以前、カヤックフィッシングに出た際にサゴシのナブラを間近で見たことがあるが、サゴシのナブラは激しく飛沫が上がるため、遠くからでも見分けやすい。
陸地の方角には、遠くに角田山と弥彦山が仲良く並んでそびえている。

角田山も弥彦山も標高こそ低いものの、地元の人々に深く親しまれている美しい山だ。
私自身、角田山には何度か登ったことがある。とはいえ、海岸側から一気に登る「灯台コース」は、なかなかにハードで辛かった記憶が蘇る。

粟島を過ぎ、夕闇に染まる日本海
出航して港が見えなくなってからも、しばらくの間、デッキから飽きることなく外を眺めていた。
海を渡る風はぬるく、肌に心地よい。
見慣れた新潟の海岸線を、いつもとは逆の海側から眺めている。一人旅の始まりを実感する、静かで贅沢な時間だ。
やがて、前方に粟島(あわしま)の姿が見えてきた。

フェリーは粟島沖の、釜谷(かまや)地区側を静かに通り抜けていく。

釜谷にある素朴なキャンプ場は、私のお気に入りの場所でもある。

島の中心から少し左側に突き出ている大きな岩は、かつて粟島を一周した時に仰ぎ見た「立島(たてしま)」に違いない。


粟島の横を通り過ぎると、海以外に目立つ景色もなくなった。
広々とした船内をのんびり散策したり、気が向いたらまたデッキに出て潮風を浴びたりと、束縛のない気ままな時間を楽しむ。

空の色が少しずつ変わり、ゆっくりと日が沈んでいく。


