土埃舞うダートコース!クチョロ原野塘路線を行く
釧路市湿原展望台の見学を終え、車に乗り込んだ。
今日は長旅の疲労回復のため、早めに釧路市街へ出てのんびりしようと考えている。しかし、市街地へ入る前に、湿原の東側にある「サルボ展望台」という場所だけは見ておきたい。
道中の自販機で、北海道民のソウルドリンク「ガラナ」を購入して気合を入れる。

現在地から道道53号を北上し、道道243号を経由して右折し、道道1060号へと入るルートを取る。

道道1060号に入ってしばらく走ると、左手に駐車場らしきスペースが見えた。
それが「コッタロ湿原展望台」の駐車場だったのだが、事前に詳細を調べていなかった私はそれに気づかず、そのまま素通りしてしまった。後になって、寄っておけばよかったと激しく後悔した。
そのコッタロ湿原展望台の駐車場を過ぎたあたりから、突如として道はアスファルトから「未舗装の砂利道(ダート)」へと変わった。

この道道1060号線は別名「クチョロ原野塘路(とうろ)線」と呼ばれており、道の両側を手付かずの深い原野に挟まれた、非常にワイルドで走りごたえのある道路だ。
車を走らせるたびに、後方に猛烈な土埃が舞い上がる。
視界に人工物が一切なく、まるで日本ではない異国の荒野を走っているような錯覚に陥る。
先ほどの市の展望台から湿原を眺めた時と同じく、行ったこともない「アフリカのサバンナ」の風景が自然と脳裏に浮かんでくる。
未舗装のダート走行を楽しんだ後は、足回りの汚れを落とすために洗車用のクロスがあると便利だ。
道のすぐ脇を、幅の広い川がゆったりと音もなく流れている。

ここは湿原を巡るカヌーツアーの発着場にもなっているようだ。

後で地図を調べてわかったのだが、この並走している川は「釧路川」だった。
高低差のない湿原の中を、釧路川は大きく蛇行しながら海へと向かって流れていく。
釧路川といえば、つい昨日、弟子屈の「道の駅 摩周温泉」の近くにある水郷公園で、その透き通った清流の姿を見ていた。


昨日見た場所が上流部であり、今私が立っているこの辺りが中流域ということになる。直線距離にして約35kmほど南へ下ってきた計算だ。
釧路川はここからさらに約20kmほど湿原を蛇行し続け、やがて釧路の市街地を通って太平洋へと注ぎ込んでいる。
一つの川の流れをたどるようにドライブするのも、なかなかロマンがあるものだ。
息切れ必至の階段とサルボ展望台
クチョロ原野塘路線(道道1060号)をさらに東へ進み抜ける。
国道391号線に突き当たって少し北へ走ると、目的地の「サルボ・サルルン展望台」の駐車場に到着した。
駐車場入り口の看板が少し分かりにくく、スペースも狭いので、通り過ぎないよう注意が必要だ。
車を降りてボディを見てみると、先ほどのダート走行で巻き上げた土埃で真っ白にドロドロになっていた。釧路市街に入ったら、真っ先に洗車場を探そう。
駐車場から、国道の路肩に沿って少しだけ北へと歩く。

ここが展望台へと続く登り口だ。

山の中へ続く階段を登り始める。

登りきったところで、道が二手に分かれる分岐点に出た。

まずは右側の「サルボ展望台」へ向かう。
案内板によると、ここからサルボ展望台までは110m、反対側のサルルン展望台までは710mの距離があるそうだ。
午前中に訪れた市の湿原展望台で、筋肉痛の足に鞭打って嫌というほど階段を登ってきたため、正直なところ「もう山道はこりごりだ」という気分だった。「遠い方のサルルン展望台までは行かず、手前のサルボ展望台だけ見て帰ろうか……」と、早くも弱気が顔を覗かせる。

短い距離を歩き、サルボ展望台に到着した。


眼下には、緑に囲まれた大きな「塘路(とうろ)湖」が美しく横たわっている。
傍らの解説看板によれば、「サルボ」という地名の語源は、アイヌ語で「サル(湿原)」と「ボ(子)」を組み合わせた「小さな葦原」といった意味を持つらしい。
他にも、塘路湖の成り立ちや、この付近の水辺に生息する豊かな生き物たちについて詳しく書かれていた。


奥地のサルルン展望台へ
サルボ展望台の景色を堪能し、来た道を引き返して分岐点に戻る。

再び分岐点に立った。

「足は痛いし疲れているが、せっかくここまで来たのだから、後悔しないようにサルルン展望台まで行ってしまおう」。そう自分を奮い立たせる。
これを見終わったら、すぐに釧路市街へ直行して大きなお風呂に浸かるのだ。それをモチベーションにして710mの山道を歩き始めた。
道端には、市の湿原展望台でも注意したあの有毒植物「バイケイソウ」が恐ろしいほど青々と繁茂している。



ふと崖の下を覗き込むと、眼下にうっすらと道路らしきものが見える。

たぶん、あの道路の近くに車を停めた駐車場があるはずだ。「帰りはここを滑り降りてショートカットできたらどんなに楽か……」と思ってしまう。
そしてようやく、奥の「サルルン展望台」に到着した。

目前に広がる景色は、先ほどのサルボ展望台とはまた違った複雑な水郷の風景だ。
一番手前に見える小さな沼が「サルルン沼」。

そして左奥に大きく広がっているのが、先ほども見えた塘路湖だ。

案内板によると、手前から順に「サルルン沼」、真ん中が「ポン沼」、そして一番奥に見えるのが「エオルト沼」という名前だそうだ。

アイヌ語の響きがそのまま残る地名に、歴史と風土の深みを感じる。
こちらは左奥の塘路湖。

遠くの空を飛んでいる大きな野鳥を発見した。

羽の模様はよく見えないが、この優雅な飛び方はもしかして、天然記念物のタンチョウ(丹頂鶴)だろうか。

確信は持てないが、釧路湿原ならではの出会いに胸が高鳴る。

展望台のさらに一段高くなっている場所へ移動する。

傍らに、白い可憐な「カンボク(肝木)」の花が咲いていた。

ここからだと、三つの沼が重なるように一望でき、最高の構図で写真が撮れる。

原野の緑の中を、真っ直ぐに人工的な線路が一本だけ貫いているのが見える。

JR釧網本線だ。ここを走る観光列車「ノロッコ号」からの車窓風景も、さぞかし格別だろう。
頑張って歩いてきた甲斐がある素晴らしい景色に満足し、サルルン展望台を後にして駐車場へと引き返した。

