ビルガンジを出発
ビルガンジでジープを捕まえ、いざカトマンズに向けて出発!...
と思ったが、ジープは中々出発しなかった。
しばらくして、小さい子どもを連れたお母さんが乗ってきた。
私と同じく、彼らもこれからカトマンズに向かうのかもしれない。
このジープは乗り合いジープのようだ。
乗客が集まったら出発するのだろう。
それから何人かが乗り込んできて、やっとジープが出発した。
と思ったら、またしばらく停まる。
今度こそ本当に出発。
大きな通りを進んでいく。
ジープの乗客はそれほど多くなく、席は広々と使える。
ビルガンジからヘトウラへ
ジープは大通りを順調に進む。
ビルガンジを抜けてしばらく行くと、辺りは自然に囲まれる。
さらにしばらく行くと、大きな街に出た。
ここはヘトウラというようだ。
何だか雰囲気の良さそうな街だ。
雑貨を売っている店がある。
こういうところに滞在するのも楽しそう。
観光客があまり来ないところなら、客引きもいないだろうし。
山道を行く
ジープはヘトウラを抜けると、次第に山道に入って行く。
時折、舗装されていないところがある。
こういうところに差し掛かる前に、運転手はしっかりスピードを落としてくれるので、安心して乗っていられた。
ただ、こういう道は、どんなにスピードを落としても結構揺れる。
私の前に乗っていた子どもは、すっかり酔ってしまっていた。
峠の食堂でダルバートを食べる
山道を走っていると、時折集落のようなところがある。
カラフルな旗がかかっており、晴天と相まってさわやかな感じがする。
橋を渡ったところに食堂があった。
ここでしばらく休憩のようだ。
何人かが食堂に入って行った。
私はとりあえずトイレへ行き、車のところに戻って体を伸ばしたりしながら、他の人を待つことにした。
あまり食欲がなかったのと、インドルピーしか持っていなかったためだ。
何より、私は食堂に入るのに勇気のいる人間なので、こういうときに躊躇してしまう。
そうしていると、運転手が来て、お前もネパリフードを食べろと言われた。
「インディアルピーOK?」と聞くと、大丈夫だと言われる。
せっかくの機会なのでやっぱり行ってみるか。
食堂で席に着くと、ベジにするか聞かれる。
ベジと伝えて少し待つと、ダルバートが運ばれてきた。
手前の左にある赤いソースはかなり辛い。
ダルバートとは、ネパールでよく食べられている定食である。
主食のライスや薄いパンに、ネパール式のカレーやおかずが何品か付いてくる。
結構な量だが、これが美味かった。
スプーンが付いておらず、他の人を見ると手で食べている。
私もこの旅で、いつかは手で食べてみようと思っていたので、良い機会だと思って手で煮ものをつかんでいると、食堂の人が笑いながらスプーンを持って来てくれた。
手で食べてみたかったが、有難くスプーンを使わせてもらうことにした。
ダルバートは、何というか優しい味だ。
赤いソース以外は辛くない。
インドのカレーと同じく、旨味はあまりないのだが、野菜の甘みがよく感じられる。
これならいくらでも食べられると思っていると、食堂の人がお代わりを継ぎ足してくれる。
いや、これは厳しいぞ。
こんなに食べられるだろうか。
そう思っていてもスルスルと食べられるのが、ダルバートのすごいところだ。
ブッダガヤのロータスレストランで食べたターリーといい、こっちの定食は量が多いのが基本のようだ。
ジープには結構なお歳のおばあちゃんが乗っており、一緒に食堂に入っていたのだが、おばあちゃんはかなりのスピードで食べている。
他の人も早い。
私は最後に食べ終わり、外で手を洗ってからお金を払った。
店の人に「インディアルピー」と伝えると、紙幣を見せろという素振りをされる。
100ルピーなどを何枚か出すと、適当に取り、適当にお釣りを返してくれた。
全員がジープに戻り、カトマンズに向けて出発する。
過酷な山道
どんどん高度を上げながら、ジープが進んでいく。
ジープ内にはノリノリのネパール音楽がかかっている。
ガタガタになっているところを何度も通る。
工事をしている所が多かった。
今通っている道は、カトマンズへの近道なのだが、ここはバスでは通れないと聞いていた。
この道幅を見ると、バスで通れないのも納得。
バスでカトマンズに行く場合、遠回りをしなければならず、かなりの時間がかかるらしい。
未舗装路が何度も続くので、前に乗っている子どもはきついだろうと思っていると、また酔ってきたようだ。
子どもの隣にいる母親が、後ろを向いて私に何か言ってきた。
ネパール語なのでさっぱり分からないが、「パニ」という単語だけ聞き取れた。
「パニ」は水のことだが、コルカタでの屋台の親父とのやり取りが印象的だったので、よく覚えていたのだ。
私がペットボトルの水を飲んでいたので、それをくれと言っているのだろう。
母親に水の入ったペットボトルを渡すと、子どもに水を飲ませていた。
カトマンズに近付く
何度も何度も未舗装路を越える。
ここを運転するのは大変な仕事だ。
何人もの乗客の命を預かりながら、危険な道を行くのだから、かなりの責任を感じるだろうし。
新潟から池袋に来た時の夜行バスといい、乗り物を運転するのは本当に大変な仕事だと思う。
カトマンズに近付いてきた気がする。
今はどのあたりだろうか。
私はネパールのSIMを手に入れていなかったが、ビルガンジからカトマンズまでのgoogleマップをインストールしていたので、オフラインでも現在地を知ることはできた。
マップを見ると、もうカトマンズの近くまで来ている。
眼下に見えるのがカトマンズではないか。
あともう少しだ。
また未舗装路が続くのだが、揺れが心地よかったのか、いつしか私は眠ってしまっていた。