タメルでインドルピーを両替する
絆でスタミナ丼を食べた。
ホテルに戻る途中、余っていたインドルピーを、どこかでネパールルピーに両替しようと思っていた。
少し前に、ホテルのオーナーから、マウンテンフライトについての話を聞いていたのだった。
マウンテンフライトとは、飛行機に乗ってヒマラヤの山々を見に行くことである。
世界一高い山のエベレストを始め、マカルーやプモリ、チェオユーなどの有名な山々を手軽に一望できるのだ。
この旅では、ツアー系のものには参加せず、ひたすら一人でブラブラしようと思っていた。
だが、憧れのエベレストが見られるとあっては心が動く。
マウンテンフライトは高いので、ひとまず保留にしたが、参加する方に傾いていた。
そんなこともあり、少しでも手持ちを増やすため、インドから持ち越していた少量のインドルピーを、ネパールルピーに変えておきたかった。
分からなかったのが、タメルの両替屋でインドルピーを変えられるのかどうかだ。
両替屋の前には、通貨交換のレートが表示されている。
ところが、どの両替屋を見ても、インドルピーだけ表示されていないのだ。
インドルピーは国外持ち出し禁止になっているので、両替屋で扱っていないのかもしれない。
または、大っぴらに表示を出していないだけで、こっそり扱っている可能性もある。
そんなことを考えていたのだが、とりあえず通りがかった両替屋で聞いてみることにした。
両替屋はどこも店舗が小さく、店の中にはカウンターしかない。
店の人にインドルピーを見せ、「インディアルピー トゥ ーネパールルピー」と言ってみる。
すると、「ワンポイントファイブ」と言われた。
レートが1.5ということだ。
まず、インドルピーを取り扱っているということは分かったが、1.5というレートはどんなものだろう。
レートが1.5ということは、例えば、1000インドルピーがあったら、1500ネパールルピーに交換してもらえるということである。
何かで、インドルピーとネパールルピーのレートは、1.6で固定になっていると見たことがあった。
それが本当だとすると、レートは悪いが、まあ許容範囲だという気もする。
替えたいのはそんなに大きい額ではないし、他を当たるのも面倒なので、ここで替えておくことにしよう。
※帰国してからネパールニュースのサイトをよく見るようになったが、サイトのトップページの一番下に、外国為替相場が出ている。
インド以外の国の相場は変化しているが、インドルピーだけレートが160のまま動かないので、やっぱりネパールルピーとインドルピーは固定相場制になっているようだ。
ちなみに、先程レートが1.6と書いたのに、ネパールニュースのサイトで160という値になっているのは、取引単位が100だからである。
客引きのタイプ分け
ホテルの方向に向かいつつ、またタメルの中をあてもなくブラブラする。
歩いていると、たまに客引きから声をかけられる。
「ハロー フレンド ハウアーユー」
誰がフレンドだ。
「ハロー ナマステー」
しつこいな。
右手を上げて追い払った。
声をかけてくる客引きは、大雑把にタイプ分けができることが分かってきた。
・手慣れたおっちゃんタイプ
・覇気のない若者タイプ
・しつこい若者タイプ
・その他
今回の客引きは、覇気のない若者タイプだった。
こういう連中は声に抑揚がなく、ボソボソとしゃべる。
幽霊のようで不気味だ。
しつこいのも特徴的。
この旅一番の危機
タメルを歩き、ホテルの南側まで来た。
この辺りは土産物屋がなく、地元の人向けの食材などが売られている。
古き良き街並みに、地元の人がたくさん歩いていて、賑やかである。
タメルの中心部とは賑やかさの質が違う。
私はこのタメルの南側が好きだった。
売られている野菜や肉類を見ながら歩いていると、私の正面にある小さい商店のところで、犬が騒いでいた。
店主がメジャーのようなものを伸ばし、野良犬にけしかけて遊んでいたのだ。
犬は興奮して飛び跳ねている。
私がその脇を通ろうとすると、犬は私に向かって吠え始める。
これはマズイ。
野良犬は狂犬病を持っている可能性があり、嚙まれるとこちらの命にかかわるのだ。
もし犬にかまれたら、すぐに病院へ行ってワクチンを打ってもらわないといけない。
だが、この近くの病院にワクチンがある保証もなかった。
内心焦ったが、こういうときは、逃げたり素早く行動すると逆に危ない。
今まで歩いていたのと同じ歩調で、犬の方を向かないようにして、犬をこれ以上興奮させないように歩いた。
犬のそばを通り過ぎると、犬が私を追いかけてくる気配がした。
マズイ。
これはマズイぞ。
そのまま冷静を装って同じスピードで歩き続ける。
すると左足に、犬の顔か体が触れたような感触があった。
それで犬はどこかに行ってしまったらしく、追ってくる気配はなくなった...
良かった。
犬と遊んでいたネパリよ、こういうことは本当に勘弁してくれ。
もう二度とこの通りは通らないと決めた。
(でもこの通りは好きだったので、やっぱり後日何度も通ることになった。)
この出来事が、インドとネパールを旅した中で一番の危機だった。
※帰国してからネパールのニュースを見ていたとき、チトワンで狂犬病によって男性が死亡したという記事を見かけた。
できることなら、インドやネパールに行く前に、狂犬病のワクチンを受けておいた方が良い。
現地に狂犬病の対応できる病院があるとは限らない。