地質のロマンが詰まった「日高山脈博物館」
道の駅のすぐ隣に、「日高山脈博物館」を発見した。

今回の北海道一周において、ここは絶対に訪れたいと思っていた場所の一つである。
日高山脈とは、北海道の中心部から南部にかけて、南北に長く連なる急峻な山脈のことだ。
日高山脈の南端は襟裳岬へと至り、山脈の連なりはそのまま海の中の「海山」として沈み込んでいる。
そして、日高山脈の南西端には「アポイ岳」という特異な山が存在する。
この山が他の一般的な山と決定的に異なるのは、山を構成する岩石の大部分が「カンラン岩」であるという点だ。
カンラン岩とは、地表のさらに奥深く、マントルを構成している岩石である。
つまり、アポイ岳のカンラン岩を調べることは、地球深部のマントルの情報を直接手に入れることと同義なのだ。
そのため、アポイ岳は世界的に見ても地質学的に非常に貴重な山とされている。
カンラン岩の主要成分は「カンラン石」である。
中学の理科で習う鉱物だが、他の岩石が白や黒であるのに対し、カンラン石だけは美しい緑色で透き通っているため、記憶に残っている人も多いだろう。
上質なカンラン石は、8月の誕生石である宝石「ペリドット」としても知られている。
そういった地質学的な背景を知っていたため、私は日高山脈とアポイ岳に強い興味を抱いていた。
今回の旅で日高山脈博物館を訪れたいと願っていたのは、そのためである。
旅の後半では、アポイ岳の近くも通る予定だ。
できれば山頂まで登ってみたいが、この夏の暑さの中で、そこまでの気力が湧くかどうかは未知数である。
せめて、日高山脈の雄大なパノラマを見渡せる展望台には立ち寄ろうと考えている。
カンラン岩と北海道の自然を学ぶ
期待を胸に、博物館の中へ。

建物は4階建てで、入ってすぐの場所に受付がある。
館内には、日高山脈に由来する岩石や化石、動植物の標本などが所狭しと展示されていた。



展示されている岩石の一つ一つに、非常に詳細な解説文が添えられている。

こちらは蛇紋岩(じゃもんがん)。
先ほど触れたカンラン岩が、地表付近で水と化学反応を起こすことによって、この蛇紋岩へと変化する。
日高山脈を構成する重要な岩石の数々が、目の前に並んでいる。


展示によれば、現在の日高町周辺は、はるか昔は深い海の底だったそうだ。
そこからどのようにしてプレートが衝突し、巨大な山脈が形成されていったのかが、分かりやすく解説されている。
図書コーナーには、地学関係の専門書が大量に揃っていた。

岩石の本、北海道の地質図、化石の図鑑、火山学の専門書。
もし時間に余裕があれば、一日中ここに籠って読書に耽りたいところだ。

上の階へ進む。

このフロアでは、日高山脈周辺に生息する動物や特有の植生について紹介されている。

有名な「エゾナキウサギ」の剥製もあった。

氷河期の生き残りとも言われる愛らしい姿。いつか自然の中で、実際に目にしてみたいものだ。
個人的にとてもありがたかったのが、樹木に関する展示である。

数年前から登山を趣味にしているのだが、山を歩いていて木を見ても、種類がさっぱり分からず、もどかしい思いをしていた。
もちろん、新潟と北海道では植生は大きく異なるが、共通する樹種もあるはずだ。
ここの展示で、少しでも木々の知識を吸収させてもらうことにした。
「シラカンバ」は本州の平地ではあまり見かけないが、北海道に入ってからは至る所で目にする。

説明文を読む限り、植物の遷移において、荒れ地にいち早く根を下ろす「先駆植物(パイオニア植物)」という位置づけのようだ。

日高山脈の厳しい環境に自生する高山植物たちも、美しい写真パネルで紹介されていた。

やはり、私が普段登っている新潟の山々とは、咲いている花も大きく違っている。
一通りの展示を堪能し、最上階の展望スペースへ。
ここ日高町は、四方を緑深い山々に囲まれた風光明媚な盆地である。

札幌や千歳といった西側エリアから、帯広や釧路のある道東へ向かう際、まさに交通の要衝・中継地点としての役割を担っている街だ。
余談だが、ここから南西の太平洋沿岸にも「日高町」があり、実はここと同じ一つの行政区域(飛び地)となっている。
二つの日高町の間には、アイヌ文化の伝承で有名な「平取町」が挟まっているという珍しい地勢だ。平取町へは、北海道一周の後半で立ち寄る予定にしている。

知的好奇心を大いに満たされ、博物館を後にした。


道の駅に隣接するセイコーマートで、手早く昼食を購入する。

弁当と一緒に、先ほど買った夕張メロンを切って食べた。
気になるその味は……言うまでもない。
ぜひ実際に北海道を訪れて、あなた自身で確かめてみてほしい。