前のページで、タメルのサードアイレストランでチキンバターマサラを食べた時のことを書いていました。

その味が忘れられず、味の再現とはいかないまでも、帰国してからスパイスカレー作りに励んでみました。
色々な具材でスパイスカレーを作ってみて、ルーを使わないカレーの作り方のコツがわかってきたので、このページに書いてみようと思います。
その前に前書きとして、カレーの定義や、私がインドで食べてきたカレーの味について書いておきます。
カレーというものについて
まず、インドを旅した中で、カレーという物について思ったことを書いておきます。
私はこれまでのページで、「カレー」という単語を何度も使ってきました。
サードアイレストランのパラクパニールや、このページの冒頭に書いた、チキンバターマサラを食べた時のページでも、それらの料理を指して「カレー」と呼んでいました。

見返してみれば、旅の最初のころから、初めてインドに来てコルカタにいたころから、レストランで出てくる辛くてスパイスの効いた煮込み料理を、全て「カレー」と呼んでいます。


正直なところ、今までに「カレー」と呼んできたものが、本当にカレーと呼んで良い物なのかどうか、よく分かりません。
どの料理もメニューにはカレーと書かれておらず、別の料理名でした。
ブルースカイカフェのチキンバターマサラ

ボジのカトラカリアやロウチンリ


カレーそのもの、そしてカレーという言葉にも歴史があり、色々な使われ方をしてきたため、今では定義が難しくなってしまっているようです。
美味しんぼという漫画に、有名なカレーの話があります。
海原雄山がカレー屋を訪れ、店主に「カレーとは何か」と問いかけるところから、物語が始まります。
その問いに答えられなかったカレー屋の店主と、主人公たちが実際にインドを訪れ、カレーについて取材し、理解を深めていくという話の流れになっていました。
確か、単行本の24巻が、丸々一冊そのカレーの話で構成されていました。
そのぐらいのスペースを使っても語り切れないほど、カレーという物は奥が深く、歴史のある食べ物なのでしょう。
本などで調べてみても、やはり、何をもってその料理をカレーと呼ぶかは、難しい問題のようです。
逆に言えば、「カレー」という言葉は色々な料理を包括して指すことのできる、便利な言葉だということなのでしょう。
日本でカレーと言えば、ルーを使ったドロドロのカレーを指すこともあれば、サラッとしたスープカレーを指すこともあります。
北海道の道の駅ウトナイ湖で食べたホッキカレー

北海道の道の駅おだいとうで食べた、ホタテのスープカレー

とりあえずこのページでは、辛くてスパイスの効いた煮込み料理をカレーと呼ぶことにします。
現地のインドカレーの味について
私はインドに行く前から、インドカレーの本を参考にしてカレーを作っていました。
そして実際にインドに行ってみて、カレーを食べて思ったことがいくつかありました。
※私が訪れたのは北インドの一部地域であり、他の地域のカレーがどのような味付けかは分かりません。
また、私はコルカタで風邪をひいてしまい、味覚がおかしくなっていた可能性もあるので、その辺りを考慮して読んでください。
まず、インドに来て訪れた、コルカタやブッダガヤで食べたカレーは、一様にしょっぱくて辛いのが特徴でした。




もう一つの共通点として、日本のカレーのような甘みや旨味が、あまり感じられませんでした。
そのため、ご飯は進みますし、美味いことは美味いのですが、やはり日本で食べ慣れているカレーとは違うので、中々食べ慣れませんでした。
インドのカレーの味の決め手になっているのは、インドに行く前からインドカレーの本で読んでいた通り、塩とスパイス、そしてタマネギのようです。
タメルのNagomi Japanese Restaurantできつねそばを食べた時のこと。

付け合わせのネギを、そばに入れて食べた時、何だかその味に既視感がありました。
食べながら考えてみると、今までに食べてきたインドカレーと、同じ味を感じたのです。
それで、やはりインドカレーには、味の決め手としてネギ類が使われているのだと思いました。
それからネパールに行き、何度か定食のダルバートを食べました。


ダルバートは、周りのカレーや付け合わせと一緒に、ライスを食べていきます。
付いてくるカレーは、素材の味を活かした優しい味のもので、やはり甘みと旨味をあまり感じませんでした。
タメルでの滞在で最後の方に食べた、サードアイのパラクパニールやチキンバターマサラは、甘みと旨味がしっかり感じられ、非常に美味いと感じました。


このようにして、色々とカレーを食べてみて思ったのは、日本人向けの味付けのカレーを作るには、甘みと旨味が重要なポイントになるということです。
インドカレーから辛みを少なめにして、甘みと旨味を足すと、日本人好みのカレーができそうな気がしました。
実際にスパイスカレーを作ってみる
インドで色々なヒントを得て、日本に帰ってからスパイスカレーを作ってみました。
手羽を使ったチキンバターカレー。

ワタリガニのカレー

爪は食べるときに邪魔になるので、入れない方が良かったです。
鶏モモ肉としめじのバターカレー

ホタルイカとブロッコリーのカレー

パラクパニール

パラクパニールはほうれん草とチーズのカレーです。
色々と作る中で、何となくコツがつかめてきたので、ページの後半に、スパイスカレーの材料と作り方のコツを書いてみようと思います。
材料の分量について
これから材料について書いていきますが、家庭にありそうなものは省いています。
また、分量はかなりアバウトです。
理由は、使う材料やその量、何人前作るかによって、各材料の適量が変わってくるからです。
味の好みや好きな具材など、一人一人違いますし、食べ慣れた家庭の味もあるでしょう。
いくつか大事な点を外さなければ、大体美味しくできるため、そのポイントを踏まえつつ、材料や作り方に幅を持たせた書き方をしています。
作り方の最後の部分で、調味料によって味を調える形にしているので、適宜調整しながら作ってみてください。
カレーは奥深く、工夫し甲斐がある料理だと思います。
様々な具材やスパイスを使ってみて、色々なカレー作りを楽しんでみてください。
スパイスカレーの材料:スパイス
では材料についてです。
まずはスパイスから。
スパイスは味に深みを出し、刺激も加えてくれます。
ただ、入れすぎると味が雑になるので、使い方に注意しましょう。
とりあえずここでは、最低限用意した方が良い物を、使う順に書いていきます。
スタータースパイス
作り始めに油を熱するとき、一緒にホールスパイスをいくつか炒めると、良い香りが出ます。

ただ、この工程は必ずしも必要ではありません。
スパイスをそろえるのが面倒であれば、省いてしまってください。
最初に炒めるスパイスとして、私がお勧めするのは、シナモン・クローブ・カルダモン・フェヌグリークシードです。

もし手に入るようなら、このうちのいくつかでも良いので、最初に入れてみてください。
シナモンとクローブは、スーパーなどで手に入りやすいです。
クローブは香りが強いので、5~6粒ぐらいにしておきましょう。
フェヌグリークシードは、香ばしく食欲をそそる香りがして、お勧めです。
フェヌグリークシードは下の画像の、小さく黄色い粒です。

フェヌグリークシードは手に入りにくいのが難点で、私はAmazonで購入しています。
もし手に入れば、小さじ1/2ほどを入れてみてください。
フェヌグリークシードも香りが強いので、あまり入れすぎないようにします。
クミンシード(ホールクミン)
クミンは下の画像の左上にある、小さい種です。

カレーに欠かせないスパイスで、インドとネパールで食べたカレーには、必ずといって良いほどこのクミンが入っていました。
街のスパイス屋の前を通ると、大量のクミンシードが売られており、辺りにはクミンの香りが強く漂っています。
スーパーでは、このような小瓶に入って売られていたりします。

大体、一回に小さじ1/2ぐらいを使い、タマネギと一緒に炒めていきます。
カイエンペッパーとターメリック
パウダー(粉)のカイエンペッパーとターメリックも用意しておきましょう。

カイエンペッパーは唐辛子の粉で、辛み付けに使います。
似たようなものに、チリペッパーという物がありますが、調べてみるとカイエンペッパーと同じような物のようです。
カイエンペッパーかチリペッパーのどちらかを用意しておきましょう。
ターメリックは、たくさん入れても大丈夫なスパイスです。
カイエンペッパーはかなり辛味が出るので、入れすぎないようにしましょう。
味を見ながら足していくのが良いです。
この二つは、肉類を使う時は、肉類をヨーグルトに漬け込むときに入れます。


肉類を使わないときは、タマネギを炒め終わり、トマトを入れるタイミングで、一緒に入れます。
ガラムマサラ
画像の左にある、オレンジのキャップの物です。

ガラムマサラは、様々なスパイスを混ぜた物のことで、商品によって香りが違います。
いくつか試してみましたが、たまにクローブの香りが強い物や、辛みが強い物があったりして、人によって好みが分かれると思います。
色々と買って、試してみると良いと思います。
スパイスカレーの材料:タマネギ
タマネギは味の決め手になります。
量はアバウトで大丈夫です。
カレー一人分に対し、タマネギ1/4や1/2ぐらい。
1個丸ごと使っても問題ありません。
切り方は、薄切りが良いでしょう。

炒めやすいよう、小さくなっていればOKです。
みじん切りなどでも良いです。
ミキサーでペーストにしてみましたが、面倒ですし、炒めにくくなったので、薄切りぐらいが良いと思います。


タマネギの他に、できればニンニクやショウガも用意した方が良いです。

どちらもみじん切りで、タマネギと同時に入れます。
スパイスカレーの材料:具材
タマネギの他に、もう1つか2つほど具材を用意しておきます。
肉+野菜とか、野菜+野菜が良いと思います。
肉に関しては、やはり鶏肉が一番美味いと思います。
特に鶏モモ肉がおすすめです。

鶏の手羽も美味いですが、食べるのが面倒になります。
他に、シーフードミックスやワタリガニ、ホタルイカ、マダイの頭などでカレーを作りましたが、どれも美味しくできました。
特にマダイの頭は美味かったですが、骨が多く、うろこ取りなどの下処理も面倒なので、あまりおすすめしません。
野菜に関しても、大体どんなものでも美味しくできると思います。
キノコや根菜、マメなどがおすすめです。
シメジ、マッシュルーム、ダイコン、レンコン、ブロッコリー、レンズマメなどで作ってみましたが、どれも美味くできました。
具材は食べやすい量を用意し、一口サイズに切っておきましょう。
後は、ほうれん草を使ったカレーもあります。
ただ具材として入れるのではなく、茹でてミキサーにかけて使います。


こういうカレーはパラクパニールというのですが、具材を煮る時にほうれん草ペーストを入れると、カレーの色が緑になります。

煮ていたら、色があまり鮮やかではなくなってしまいました。

トマトを入れすぎたのかもしれません。
サードアイで食べたパラクパニールは、鮮やかな緑色をしていました。

どうやって作ったらこのような色になるのだろう。
私が作ったものも、色はともかく、味の方は美味でした。

スパイスカレーの材料:トマトとヨーグルト
トマトは入れておきたいところですが、生野菜は高いし面倒なので、缶詰か無塩のトマトジュースを使うのが簡単です。

ケチャップでも代用できますが、味に酢の酸味が出るので、仕上がりが少し変わってきます。
ヨーグルトについては、無くても問題ありません。
スパイスカレーの材料:調味料
味の決め手となるのが、塩と鶏がらスープの素です。

画像の塩は岩塩ですが、普通の塩で大丈夫です。
鶏がらスープの素は、スーパーの中華料理コーナーなどに売られています。
いくつも種類がありますし、洋風のコンソメなどを使っても美味しく作れます。
要は、旨味を足せるものであれば、なんでも構いません。
もっと本格的に作るのであれば、化学調味料は使わず、肉や魚介を煮込んで取ったダシ汁を使います。
スパイスカレーの作り方:ダイジェスト
以下にスパイスカレーの作り方を書いていきますが、長くなったので、まずは全体の流れを書いていきます。
スパイスカレー作りの行程は、大きく4つに分かれます。
1.下準備
タマネギやニンニクを小さく切ります。

使う具材も食べやすい大きさに切っておきましょう。

魚や肉を使う場合は、ヨーグルトとスパイスに漬けておきます。


2.タマネギを炒める
油を熱してタマネギやニンニク、クミンを炒めます。



3.具材とトマトを入れる
タマネギを炒めたところに、他の具材やトマトを入れます。


ターメリックやカイエンペッパーなども入れて煮込んでいきましょう。


4.味を調える
具材に火が通ったら、塩や鶏がらスープの素、ガラムマサラなどで味を調えていきます。


スパイスカレーの作り方:下準備
では、最初から作り方を詳しく書いていきます。
まず、材料を食べやすい大きさに切ったり、下処理をしておきましょう。

タマネギは、先ほど書いたように、炒めやすい大きさに切っておきます。

肉や魚を使う場合、ヨーグルトとスパイスを混ぜたものに漬けておきます。


ヨーグルトは多めで大丈夫ですが、ヨーグルトがない場合は、肉類にスパイスだけまぶしておきます。
この時使うスパイスは、ターメリック1~2振り、カイエンペッパー1振りほどです。
カイエンペッパーはかなり辛いので、少なめにして様子を見ましょう。
辛さが足りなければ、後で足すこともできます。
上の画像では、パプリカパウダーや、チューブのしょうがとにんにくも混ぜています。
スパイスカレーの作り方:油を熱してタマネギを炒める
鍋にサラダ油を入れて火にかけます。
スタータースパイスを使う場合、油と一緒に入れておきます。

スパイスが黒くなってきたら、スプーンなどで取り出しましょう。

スパイスを入れたままにしておくと、苦みが出たり、口当たりが悪くなります。
スパイスを炒めた油に、タマネギとクミンを入れていきます。
※ホールスパイスを炒めていない場合は、普通の油にそのままタマネギとクミンを入れてOK

タマネギとクミンの他に、にんにくやしょうがをみじん切りにして入れるのもお勧めです。

タマネギが良い色になるまで、炒めていきます。

スパイスカレーの作り方:具材とトマトを入れる
タマネギが炒まったら、他の具材を入れ、トマト(ジュース)も入れます。

ヨーグルトに漬けた肉や魚があれば、ヨーグルトごと入れてしまいましょう。

ヨーグルトに漬けた具材が無ければ、ここでヨーグルトを、大さじ2ぐらいを目安に入れておきます。
ヨーグルトが無ければ入れなくても構いません。
ヨーグルトとトマトは、たくさん入れても大丈夫です。

もしここで、ヨーグルトとスパイスに漬けた肉や魚を入れていない場合は、ターメリックとカイエンペッパーを入れます。
分量は先ほど書いた通り、ターメリック1~2振り、カイエンペッパー1振りほどです。
トマトとヨーグルトを合わせ、水分で材料がヒタヒタになるようにします。

もし水分が足りなければ、水を足します。
ダイコンやレンコンなど、煮えるのに時間がかかる具材を使う場合は、水分量を多めにします。
もしパラクパニールを作る場合は、このタイミングでほうれん草ペーストを入れます。


スパイスカレーの作り方:煮ながら味を調える
具材を入れたら煮込んでいきましょう。

煮込んで具材に火が通ってきたら、味見をしながら味を調えていきます。
ダシが出る具材を煮込むと、それだけで良い旨味が付いていることがあります。
様子を見ながら、
・塩:しょっぱさ
・鶏がらスープの素:甘みと旨味
・ガラムマサラ:スパイスの刺激
・カイエンペッパー:辛さ
などを足していきます。

まず、味のベースとなる、塩と鶏がらスープの素を入れていきます。
最初は多めに入れてみて、後は味を見ながら少しずつ入れ、好みの味になるよう調整しましょう。

次は香りづけにガラムマサラを入れます。
商品によっては辛い物もあるので、やはり様子を見ながら、少しずつ入れていきましょう。
程よく香りが付いたら、完成です。

仕上げにバターを入れたり、市販のココナツミルクを入れたりしても美味いと思います。


パンでもご飯でも、好きなものと合わせて食べましょう。

また、カレーにはチャイがよく合います。
よろしければチャイも一緒にどうぞ。