シットオントップカヤックについて
このページでは、カヤックのタイプやカヤックとカヌーの違いについて書いていきます。
まず、カヤックのタイプについて。
私が使っているカヤックは「シットオントップカヤック」という種類のカヤックです。
シットオン(~の上に座る)トップ(カヤックの上)という名の通り、カヤックの上に腰掛けるタイプのカヤックです。
カヤックの内部が密閉された空洞になっており、それで浮力を得ることができます。
イメージとしては、プラスチックの密閉容器が水の上に浮いていて、その上に座るような感じです。
ところで、カヤックの形状は大きく分けて、シットオントップタイプと、カヤックの中に入り込むシットインタイプの二つがあります。
テレビなどによく出ているのは、中に入るシットインタイプです。
メディアで見かけやすいので、カヤックとかカヌーといえば、シットインタイプを思い浮かべる方が多いと思います。
ところが、本やネットで調べても、海で実際に見てみても、カヤックフィッシングに用いられているのはシットオントップカヤックのほうが多いです。
なぜカヤックフィッシングではシットオントップが使われることが多いのか、その理由は定かではありませんが、いくつか推測ができます。
レジャーとしてのカヤックフィッシングは、基本的に穏やかな内湾で、波が低く天候の良い日に行うことが多いと思います。
そういった海域では、シットオントップぐらいの安定性があれば充分なため、シットインタイプより簡単に扱える、シットオントップの方に軍配が上がるのだと思います。
実際、今までシットオントップに乗ってきて、カヤックから振り落とされそうになったことは一度もありません。
また、シットオントップカヤックは荷物の収納性が高いです。
カヤックの前後に荷物を置けたり、内部の気室も収納スペースとして使えます。
荷物が多くなりがちな、カヤックフィッシングに向いているというのも、大きな理由だと思います。
魚群探知機を載せる際も、邪魔になるバッテリーなどを気室内に収納できますし、カヤック上部に本体を置くのも容易です。
カヤック上部が広く、身体も自由に動かせるため、色々な作業がしやすいことも利点です。
釣りをしている時の仕掛けの変更や、魚の処理なども、上部スペースで楽々できます。
カヤックフィッシングには、シットオントップが使われることが多いですが、もちろんシットインでカヤックフィッシングができないという訳ではありません。
実際に、シットインカヤックで釣りをしている人を見たことがあります。
カヤックを選ぶ際、カヤックフィッシングだけに使うのであれば、シットオントップカヤックが良いと思います。
カヤックで離島を目指したり、長距離を漕ぐ予定もあるのであれば、シットインタイプの方が良いでしょう。
また、シットインタイプの中には、フォールディングカヤックという、折り畳み式のカヤックもあります。
フォールディングカヤックは収納性が良く、カヤックを車の上に車載する必要がありません。
何らかの理由で車載ができない場合など、折り畳み式のカヤックを選択肢に入れても良いでしょう。
カヤックとカヌーという言葉について
さて、次に混同されやすいカヤックとカヌーの違いについて書いておきます。
私の手元にある、岩波書店の広辞苑から言葉を引用してみます。
まず「カヤック」という言葉については、
①エスキモーが狩猟に使う両舷漕ぎで軽量の小艇。木の枠にアザラシの皮を張り、漕ぎ手の腰のあたりの皮をひもで締めて浸水を防ぐ。②1に似たスポーツ用小艇。パドルで交互に漕ぐ
と書かれています。
”エスキモーが狩猟に使う”という部分を省略すると、舟の構造の説明になります。
両舷漕ぎで軽量の小艇。木の枠にアザラシの皮を張り、漕ぎ手の腰のあたりの皮をひもで締めて浸水を防ぐ。
この構造は、私が使っているシットオントップカヤックには当てはまりません。
シットインタイプのカヤックに近い説明です。
②1に似たスポーツ用小艇。パドルで交互に漕ぐ
という部分も、1に似た
という記述がある以上、シットインを指しているようです。
カヤックという言葉は元々、エスキモーが狩猟に使う舟のみを表す、狭い言葉でした。
それが時代の変遷とともに、スポーツ用の小艇を表す言葉として、広く使われるようになっていったようです。
辞書の記述だけ見ると、私が乗っているシットオントップカヤックは、カヤックと呼べないような気もします。
次にカヌーですが、カヌーと言えば、私が裏磐梯フォレストスプリングで乗ったことのあるような、中をくり抜いた形の舟を思い浮かべます。
広辞苑からカヌーの説明を引用してみましょう。
軽量・小型の手漕ぎ舟の総称。丸太をくりぬいたり、骨組みを作って獣皮や樹皮を張ったりして造る。
軽量・小型の手漕ぎ舟の総称。
とある以上、包含関係としては、カヌーという言葉の方が、カヤックより広い舟を指しているようです。
私が使っているカヤックも、シットオントップ”カヌー”と呼んでも差し支え無いのかもしれません。
カヌーとカヤックの違い
ここまで辞書の言葉を引用してみましたが、カヌーという言葉がカヤックという言葉を内包するのは分かりました。
ただ、カヤックとカヌーの違いについては、分かったような分からないような、判然としない状態です。
シットオントップカヤックが、カヤックの範疇に入るのかも不明です。
言葉について、辞書の記述を見ながら考えるのも限界があります。
その言葉が使われ出してから、現在使われている意味を持つようになるまで、様々な経緯があったはずだからです。
特にカヤックやカヌーのような歴史のある言葉は、とても複雑な経緯を持っているに違いなく、意味も多様に分化しているはずです。
カヤックについて言えば、
①エスキモーが狩猟に使う両舷漕ぎで軽量の小艇。
を指していた言葉が、
②1に似たスポーツ用小艇。パドルで交互に漕ぐ
を指すようになるまで、かなりの空白があります。
この空白部分が分からないと、言葉の意味を正確に捉えることができません。
この、カヤックとカヌーの歴史について詳細に書かれているのが、カヤックフィッシングの参考図書で紹介した、シーカヤック教書という本です。
カヤックとカヌーの歴史が数ページに渡って書かれています。
結構複雑なため、詳細は本で確認してください。
カヌーとカヤックの違いについて、とりあえず結論だけ引用します。
シーカヤック教書によれば、
シーカヤックは、海を主なフィールドにするツーリング用のカヌー
”カヤック”が”シーカヤック”に置き換わっていますが、やはり辞書で見たように、カヌーの方が範囲の広い言葉として使われています。
カヌーは小舟を指す言葉でしたが、その中でも、ツーリングという用途に限定したものが、カヤックであるようです。
この定義であれば、形状は関係なく、シットオントップカヤックも、カヤックと呼んで差し支え無さそうです。