ブッダガヤ七日目の早朝
ブッダガヤ滞在の最後の日。
早朝の5:00に起床した。
明日の早朝にブッダガヤを出発するため、今日は朝早く起きてその下見に出ようと思っていた。
野良犬がウロウロしているかどうかと、早朝にリキシャが捕まえられるかどうかを見ておきたかったのだ。
ついでに、マハーボディ寺院に朝の参拝に行くつもりだった。
マハーボディ寺院は、各国から僧侶が集まるだけあり、早い時間から入れるらしい。
早朝のマハーボディ寺院はさぞかし荘厳だろう。
ぜひ見ておきたかった。
部屋の掛け軸に朝の挨拶をする。
インドの神様だろうか。
さて、ゲストハウスを出ようとするが、玄関が空かなかった。
考えてみれば当たり前だが、暗い時間帯は鍵が閉まっているのだ。
鍵を開けて外に出られそうだったが、止めておいた。
しばらく待つことにしよう。
大通りを通ってマハーボディ寺院に向かう
8:00ごろ、ゲストハウスから外へ。
いつもはゲストハウスの裏道を通り、南へ行ってブッダガヤの大通りに出て、日本寺へ行くのが日課だった。
今日は裏道には行かず、いきなり大通りに出てマハーボディ寺院に向かうことにした。
ゲストハウスのある通りを南へ向かう。
この通りは野良犬が多い。
のどかな景色。
こののどかな景色も今日で見納めだ。
大通りに出た。
東にあるマハーボディ寺院に向かって歩く。
一人目のガイドに会う
時折、リキシャが傍らに停まって「マハーボディ?」と聞いてくる。
前は全て無視していたが、段々と対応するのに余裕が出てきた。
今ではにこやかに、「NO」と言って断るようになった。
寺院に近付くと土産物屋が増えてくる。
歩いていると、今までに何度か会ったガイドのAさんに遭遇した。
ブッダガヤは狭いので、同じ人とよく会うのだ。
このとき、私はせっかくマハーボディ寺院に行くのだからと、昨日買った数珠を付けていた。
Aさんは、私が数珠を付けているのを目ざとく見つけ、「私の土産物屋で買うよう言ったのに」と言ってくる。
私はこの正直さ、がめつさが結構気に入っていた。
自分の意図を隠して接近して来られるよりも、分かりやすくて良い。
そして彼は、「その数珠はいくらで買った?」と聞いてきた。
他のガイドたちからも、同じように値段について質問されたことがあった。
彼らは、同業他者がいくらで商売をしているのか、常に気にしているようだった。
おさらいしておくと、このAさんと初めて会ったのはブッダガヤ二日目の日本寺。
そのときマハーボディ寺院を案内してもらっていたのだった(勝手に付いてきたとも言う)。
その後、彼は私を観光名所や土産物屋に連れて行こうとしてきた。
面倒なので、もう遭遇するのは勘弁と思っていたのだが、昨日、鉄道チケットの購入を助けてもらったのだった。
その恩があり、こちらとしては彼に頭が上がらない状態だ。
お礼に彼の土産物屋で何か買っておくかという気になりかけていたのだが、この場は何とか逃げ出した。
次は逃げられないかもしれない。
※彼と会うのはこれが最後になった
二人目のガイドに会う
Aさんをやり過ごし、大通りをマハーボディ寺院に向かって歩く。
Oh…
もう一人見知ったガイドのCさんがおり、声をかけられてしまった。
彼とはブッダガヤでの五日目(一昨日)に、道端で出会ったのだった。
昨日も鉄道のチケットオフィスで会っていた。
彼は私に付いてきて、「土産物を見て行って」と言ってくる。
困った。
これは逃げられないかもしれないな。
彼は、私がもうブッダガヤからいなくなるのを知っているから、今日は強めの営業をかけてくるだろう。
もちろん、逃げようと思えばいくらでも逃げる方法はある。
だが彼は、人間心理の微妙なところを付いてくるのだ。
彼はコミュニケーションが上手いので、逃げるのが難しい。
そんなに悪い人ではなさそうだから、無下にするのはかわいそうだと思わせてくるのだ。
それでいて、「土産物を買っていって」という意図はしっかりと伝えてくる。
「見るだけでも良いから」と。
そうして段々と、土産物を見に行くのが当然という空気感を作ってくる。
とどめは、「土産の収益の何%がマハーボディ寺院の維持費になる」「最近日本人が少なくて生活が苦しい」ときた。
そんなことを言われると、まあ安い物なら少しぐらい買って行ってやろうかと思ってしまう。
彼の勝ちだ。
このCさんは、旅で出会った中で一番手練れの客引きだったと思う。
コルカタで会ったしつこい客引きとはレベルが違った。
しつこさに脱帽
彼の土産物屋は、マハーボディ寺院の近くにあった。
彼と一緒に土産物屋まで行くと、土産物屋はシャッターが下りている。
店主が今こちらに向かっているようだ。
最後の抵抗で、「時間が無いから待てない」「もうマハーボディ寺院に行かないと」と伝える。
すると彼は、「じゃあ〇〇さん(私の名前)が寺院を見て回って帰ってくるのを待ってるよ」と、そのままマハーボディ寺院前のカウンターの所で待つ様子だった。
※マハーボディ寺院では、入る前にカウンターにスマホを預けなければいけない。
もう無理。
逃げられない。
どうしても土産物屋に連れて行かれる運命なのだ。
このしつこさ。
たった一件の案件を取るためにここまで粘ってくる。
私もよく見習わないといけないな。
※マハーボディ寺院に入った時のことは、次のページに書きます。
ガイドに土産物を買わされる
マハーボディ寺院を見終わり、外へ。
スマホを預けたカウンターへ向かった。
あわよくば、Cさんがいなくなっていると良いなと思っていたが、やはりというか、そうは問屋が卸さない。
カウンターのそばにはCさんが待っていた。
カウンターでスマホを回収した後、Cさんに土産物屋に連れて行かれる。
結局、精一杯値切ったものの、菩提樹の実で作られた数珠を買わされることになった。
かなり高い数珠も見せられたが、「予算オーバーだからこれ以上は許して」と伝え、許してもらった。
お土産に支払ったお金は、勉強代ということにしておこう。
※Cさんと会うのはこれが最後となった。
ブッダガヤのガイドたちについて
ブッダガヤでは、AさんとCさんの二人のガイドたちと多く関わった。
最初は彼らの狙いが分からず、面倒だし怖いと感じていた。
それが関わっていくうちに、何となく彼らのことが分かってきて、普通に話ができるようになっていった。
彼らと関わっていると、鉄道のチケットを取るのを手伝ってくれたり、観光の情報をくれたりと、必ずしも悪いことばかりではなかった。
もちろん油断は禁物なのだが、彼らはそんなに悪い人たちではないような気もする。
ガイドたちと話をして顔見知りになっておくと、旅が楽になることが分かった。
特に、私のように英会話が不得手だと、日本語ができる彼らは貴重な存在だ。
それにしても、今回はガイドのAさんから色々と恩を受けたが、結局、彼の所でお金を使わないままになってしまった。
こういうことは、小さな棘となって心の中に残り続ける。
彼は勝手に関わってきたわけなので、色々としてもらったことが、恩と呼べるのかは微妙なところである。
だが、鉄道チケットの入手を手伝ってもらったことはありがたかったし、マハーボディ寺院でのガイドも、(結果的には)してもらって良かったような気がする。
彼の所でお金を使うのに、十分な恩を受けたような気はするのだ。
そういえば、コルカタにいたサトシさんにも、情報だけもらってお金を使わないままになってしまった。

またコルカタに行くことがあれば、サトシさんにも恩返しをしたいものだ。
それまでずっと、すっきりしないまま過ごすことになるだろう。