【トゥクトゥクとスーツファクトリー】バンコク七日間紀行・その19
タイの首都バンコクを、七日かけて歩いた時の記録です。
このページでは、カオサン通り手前で客引きに捉まり、トゥクトゥクでスーツファクトリーに行った時のことについて書いています。
・文章を書いている現在、1バーツは約4.4円ですが、手数料なども考えて1バーツ5円として計算しています。
心証は真っ黒
先生を自称する客引きのような人に会い、トゥクトゥクに乗せられて寺院に連れて行かれたのだった。
寺院を見学し終えて外に出ると、運転手が待っていた。
次はスーツファクトリーに連れて行かれるようだ。
トゥクトゥクに乗る前、運転手に、本当にどこでも90バーツなのかと確認した。
自称先生の客引きに捉まった時、このトゥクトゥクは政府のトゥクトゥクで、どこでも90バーツと言われていたのだ。
運転手はこちらが疑っていると思ったようで、何やらメモを見せてくる。
日本語で書かれたメモで、日本人の署名入りだ。
曰く、「この運転手さんは、寺院とファクトリーにお客を連れて行くと、ガソリンのチケットをもらえて得をする」というようなことが書いてあった。
思わず笑ってしまう。
政府のトゥクトゥクのはずなのに、そんな契約があるものか。
心証は真っ黒だ。
青いトゥクトゥクが政府のトゥクトゥクだというのも、噓なのだろう。
自称先生とこの運転手は間違いなくグルだ。
きっと、次に行くスーツファクトリーでは、スーツを買わないかと営業を受けることになる。
本当ならここで(いやもっと前の時点で)さようならをするべきだった。
だが、私は営業職をやっていたので、スーツファクトリーでどのような営業をかけられるのか興味があった。
今後の参考に手口を見てみたいという誘惑に勝てず、再度付いて行ってみることにした。
もちろんリスクヘッジは最大限にしたうえで。
このときはトゥクトゥクの運転手に対し、不信感しかなかった。
だが、バンコクで色々なものを見て考えた後では、トゥクトゥクの運転は大変な商売で、こういう副業をしないと生活していけないのでは、と考えるようになった。
トゥクトゥクと客引きは親和性が良いこともある。
トゥクトゥク運転手の給与について、また後のページで書いてみようと思う。
トゥクトゥクの乗り心地
不信感を抱きつつも、トゥクトゥクに乗るのは結構楽しい。
車高が低く、地面との距離が近い。
ガタンガタン揺れながら、バイクのように車の間を縫って快走する。
アトラクションに乗っているようだ。
乗り心地を楽しみつつ、現在地はしっかり把握しておく。
スーツファクトリーで問答
スーツファクトリーの入り口にトゥクトゥクが停まる。
見た感じは普通のスーツ屋だ。
アルマーニのスーツを売っているそう。
トゥクトゥクの運転手に「アイハブノーマネー」と言うと、日本語で「ミルダケミルダケ」と言ってスーツ屋に入るよう促してくる。
スーツ屋の入り口では、営業マンらしき人が待ち構えていた。
促されるまま中をのぞくと、ちゃんとしたスーツ屋らしく、普通の買い物客もいる。
席に案内されそうになったので、また「アイハブノーマネー」と言ってみる。
すると営業マンは電卓を取り出し、「ディスカウントで、20000バーツ(100000円)のスーツが30%引きになる」と言ってきた。
そんな無茶苦茶なディスカウントもないだろう。
さらに、「でもお金が、、、」と伝えると、「クレジット」やら「アップルペイ」があるだろうと言い出した。
この時点で営業の参考にはならないと見切りを付け、「アイハブノーマネー」を繰り返しながら店を出ることにした。
営業の鉄則
営業は、先にお金の話で勝負をしてはいけない。
相手がお金のことを気にしても、まずは商品がどれだけ良いものか、何故あなたに必要なのかを説いたうえで、最後にお金の話をするのが定石である。
特に、ザックを担いでシワシワのシャツを着ており、首に手ぬぐいを巻いているような貧相な恰好をした旅行者に、高いスーツを買わせるには、よほどの営業技術が必要だ。
まず定石を外しては、絶対に買わせることはできない。
もしかすると、営業マンも私の恰好で見切りを付け、早く出て行ってほしいと思っていたのかもしれない。
外に出ると、トゥクトゥクの運転手が何事かを無線で話していた。
手切れとして、また、暇つぶしをさせてもらったお礼として100バーツを渡し、ここを後にした(本当は言い値の90バーツを渡したかったのだが、細かいのがなかったので、100バーツを渡し、おつりをもらわずすぐに離れた)。
さて、これからどうしようか。
そういえば、自称先生と話をしていたとき、「カオサンノーグッド」「チャイナタウングッド」とか言っていた。
カオサンには行かない方が良いと言っていたので、なんとしてもカオサンに行ってやろうという反抗心が頭をもたげてくる。
当初の予定通り、カオサンを目指して歩を進めることにした。