カヤックとカヌーという言葉について
ややこしい話になりますが、混同されやすいカヤックとカヌーの違いを見ておきましょう。
私の手元にある、岩波書店の広辞苑から言葉を引用してみます。
まず「カヤック」という言葉については、
①エスキモーが狩猟に使う両舷漕ぎで軽量の小艇。木の枠にアザラシの皮を張り、漕ぎ手の腰のあたりの皮をひもで締めて浸水を防ぐ。②1に似たスポーツ用小艇。パドルで交互に漕ぐ
と書かれています。
”エスキモーが狩猟に使う”という部分を省略すると、舟の構造の説明になります。
両舷漕ぎで軽量の小艇。木の枠にアザラシの皮を張り、漕ぎ手の腰のあたりの皮をひもで締めて浸水を防ぐ。
この構造は、私が使っているシットオントップカヤックには当てはまりません。
シットインタイプのカヤックに近い説明です。
②1に似たスポーツ用小艇。パドルで交互に漕ぐ
という部分も、1に似た
という記述がある以上、シットインを指しているようです。
カヤックという言葉は元々、エスキモーが狩猟に使う舟のみを表す、狭い言葉でした。
それが時代の変遷とともに、スポーツ用の小艇を表す言葉として、広く使われるようになっていったようです。
辞書の記述だけ見ると、私が乗っているシットオントップカヤックは、カヤックと呼べないような気もします。
次に、広辞苑からカヌーの説明を引用してみましょう。
軽量・小型の手漕ぎ舟の総称。丸太をくりぬいたり、骨組みを作って獣皮や樹皮を張ったりして造る。
軽量・小型の手漕ぎ舟の総称。
とある以上、包含関係としては、カヌーという言葉の方が、カヤックより広い舟を指しているようです。
私が使っているカヤックも、シットオントップ”カヌー”と呼んでも差し支え無いのかもしれません。
カヌーとカヤックの違い
ここまで辞書の言葉を引用してみましたが、カヌーという言葉がカヤックという言葉を内包するのは分かりました。
ただ、カヤックとカヌーの違いについては、分かったような分からないような、判然としない状態です。
シットオントップカヤックが、カヤックの範疇に入るのかも不明です。
言葉について、辞書の記述を見ながら考えるのも限界があります。
その言葉が使われ出してから、現在使われている意味を持つようになるまで、様々な経緯があったはずだからです。
特にカヤックやカヌーのような歴史のある言葉は、とても複雑な経緯を持っているに違いなく、意味も多様に分化しているはずです。
カヤックについて言えば、①エスキモーが狩猟に使う両舷漕ぎで軽量の小艇。
を指していた言葉が、②1に似たスポーツ用小艇。パドルで交互に漕ぐ
を指すようになるまで、かなりの空白があります。
この空白部分が分からないと、言葉の意味を正確に捉えることができません。
この、カヤックとカヌーの歴史について詳細に書かれているのが、カヤックフィッシングの参考図書で紹介した、シーカヤック教書という本です。
カヤックとカヌーの歴史が数ページに渡って書かれています。
結構複雑なため、詳細は本で確認してください。
カヌーとカヤックの違いについて、とりあえず結論だけ引用します。
シーカヤック教書によれば、
シーカヤックは、海を主なフィールドにするツーリング用のカヌー
”カヤック”が”シーカヤック”に置き換わっていますが、やはり辞書で見たように、カヌーの方が範囲の広い言葉として使われています。
カヌーは小舟を指す言葉でしたが、その中でも、ツーリングという用途に限定したものが、カヤックであるようです。
この定義であれば、形状は関係なく、シットオントップカヤックも、カヤックと呼んで差し支え無さそうです。