波打つ丘陵地帯を抜け、塩別つるつる温泉へ
道の駅おんねゆ温泉に戻り、停まっている車を眺めてみる。
これまでの道北エリアでは旭川ナンバーの車ばかりだったが、この辺りまで来ると地元である「北見ナンバー」の車が急に多くなった。
こうした小さな変化からも、自分が北海道の別のエリアへ移動してきたことを実感する。
時刻は昼下がり。
今日は早朝から十分すぎるほど走り回った。長距離運転の疲れもあるし、本日の観光や移動はここまでにしよう。
道の駅の案内所で教えてもらった日帰り温泉の中から、名前が気になった「塩別つるつる温泉」を目指すことにした。

温根湯から西へ向けて車を走らせる。
温泉へ向かう途中、あまりに景色が美しかったため、たまらず車を降りて写真を撮った。

どこか、富良野周辺ののどかな風景と似ている。
道の左右には広大な畑が広がり、その奥には小高い丘と山々が連なっている。

幾重にも重なる山の稜線が、まるで波打っているかのように見える。
畑に青々と茂っている作物はネギかと思ったのだが、後で調べてみたところタマネギだった。

ここ留辺蘂(るべしべ)の辺りをはじめ、北見市は日本有数のタマネギの産地として有名なのだそうだ。

綺麗なお椀型をした山が多く、見ていて飽きない。

驚異の還元力!肌が若返る名湯を堪能
丘陵地帯を抜け、目的地の「塩別つるつる温泉」に到着した。

浴場に入ると、湯は無色透明だが、ツンとした強い硫黄の香りが漂っている。
体を洗う洗い場のシャワーからも温泉の香りがしたので、おそらく源泉が使われているのだろう。贅沢な造りだ。
先ほど訪れた「北の大地の水族館」の展示パネルに、ここおんねゆ温泉郷の泉質の凄さについて書かれた説明書きがあったのを思い出す。
なんでも、おんねゆ温泉は非常に還元力が強く、肌の酸化を防ぐアンチエイジング効果が期待できるのだという。このような高い効能を持つ温泉は、全国的にも稀だそうだ。
実際に湯に浸かってみると、驚くほど肌がつるつるとスベスベになった。
「つるつる温泉」という直球な名前は伊達ではない。
今日、水族館の体験コーナーでドクターフィッシュに手の角質を齧られ、手だけが異様にスベスベになっていたのだが、この温泉に全身浸かったことで体中がスベスベになってしまった。
北海道に上陸して以来、毎日のように極上の温泉に浸かっている。このままスベスベになり続けたら、一体最後にはどうなってしまうのだろうか。
火照った体を冷ますため、外の露天風呂へ出た。
すぐそばを小川がサラサラと音を立てて流れており、適度に冷たい山風が頬を撫でていく。最高の心地よさだ。
今日は北海道に来てから、間違いなく一番長い距離を運転した過酷な日だった。
ゆっくりと長湯をして、体の芯まで疲れを癒やそう。
本当に、風呂は良いものだ。蓄積した疲労が、温かい湯の中に溶け出していくのがわかる。
怒涛のオホーツク縦断ドライブを振り返る
湯船の中で、今日一日の長い道のりを振り返る。
本当に早朝から運転しっぱなしだった。
日本の最北端・宗谷岬の近くである猿払村を出発し、ひたすら広大なオホーツク海沿岸を南下して紋別へ。

道中では、荒々しいウスタイベ千畳岩の柱状節理の絶景に息を呑んだ。

紋別市街に入ってからは、山と海の両方から景色を楽しむべく、スカイタワーとオホーツクタワーを梯子した。


その後海沿いを離れ、遠軽を経由して内陸の温根湯温泉へとやってきたのだ。

そして、この温根湯の地で、北の大地の水族館や北きつね牧場を満喫した。


温根湯温泉は、魅力的な観光地がコンパクトにまとまっており、こうして極上の温泉もある。立ち寄り観光の拠点として非常におすすめの場所だ。
それにしても、今日は本当に信じられない距離を走った。
道北から道東へ抜けるルート上には、他にも魅力的な観光地が数多くあったはずだが、その多くを時間の都合で素通りしてしまった。
少し急ぎ足でもったいない回り方をしてしまったかもしれないが、これも一人旅のご愛嬌だ。
明日は北見市街を抜け、いよいよ網走へと向かう予定である。
網走といえば、有名な「博物館 網走監獄」がある。
愛読している漫画『ゴールデンカムイ』の重要な舞台にもなっており、今回の旅でぜひとも訪れてみたかった念願の場所だ。
網走では少しペースを落として、ゆっくりと過ごしたい。
新潟に住んでいる私にとって、オホーツク海に面した網走はまさに「日本の果て」のような場所だ。この先、人生でそう何度も来られる場所ではないだろう。
色々な思いを巡らせているうちに、すっかり長風呂をしてしまった。
のぼせる前に上がろう。
一人旅の夜長と心境の変化(六日目の終わり)
温泉でさっぱりした後、車を停めている道の駅へ戻る途中、夕食を調達するためにセブンイレブンに立ち寄った。

そういえば、北海道に上陸して初のセブンイレブンだ。(これまではセイコーマートばかりだった)
本州の店舗とは品揃えが少し違い、北海道ならではのご当地商品が陳列されていて面白い。
私の車は天井が低いため、車中泊での車内での食事が一苦労だ。
体を捻じ曲げ、窮屈な姿勢で窮屈な飯を食う。
それにしても、北海道に来てからというもの、ソフトクリームなどの甘いものばかり食べている気がする。このままでは旅行中に糖尿病になってしまうのではないかと心配になる。
夕食後、今日各地の土産物屋で買い集めた戦利品をベッドの上に広げてみた。
これは宗谷岬で見つけて、つい衝動買いしてしまったもの。

郵便局からそのままポスト投函で送れる面白いお土産らしい。明日、網走の郵便局から誰かに送ってみよう。
水族館で買った、渋いイトウの手ぬぐい。

北きつね牧場で買ったしおりとキーホルダー。

他にも、イトウのコースターや風景のポストカードなど、細かいものをたくさん買ってしまった。
あとは各地で回したガチャガチャも。
北海道には、100円で回せるご当地ピンズのガチャガチャが各地の道の駅などに設置されている。
ここの道の駅では「北海道の淡水魚ピンズ」を見つけ、つい回してしまった。
今日買った土産物を小さな袋にまとめ、車の後部の土産物専用スペースへと移動させる。
荷物の整理を済ませ、明日のナビゲーションに備えてスマホとカメラをシガーソケットの充電器に繋ぐ。
そして、暗い車内でツーリングマップルを広げ、明日の予定ルートを確認する。
車中泊の夜、これが毎夜の欠かせないルーティーンになっていた。
車内の薄暗いランプで本や地図を読むのは目が疲れるため、クリップ式の小さな読書灯があると車中泊では非常に便利だ。

明日の予定を確認し終えた後は、眠気が訪れるまで本を読んだり、ただ静かに物思いにふけったりする。
北海道へ来る前、仕事を辞めてからの日々は、頭に浮かぶことといえば学生時代の嫌な記憶や後悔ばかりだった。
しかし、こうして非日常の旅を続けているうちに、それらの記憶が一つずつ頭の中で整理され、引き出しが再構築されているのを感じる。
嫌な記憶が、自発的にフラッシュバックすることが明らかに少なくなってきた。
これもまた、旅がもたらす素晴らしい効用なのだろうか。
夜中、ふいに腹が減って目を覚ました。
夜中に空腹で目が覚めるなんて、随分と久しぶりのことだ。
その後もしばらく眠れずに、暗闇の中で時間を過ごした。
眠れない夜を過ごすのも、なんだか久しぶりな気がする。
心身ともに北海道での旅の生活に慣れ、心の中に少しずつ余裕が生まれてきたのかもしれない。
明日は網走だ。静かな期待を胸に、夜明けを待った。