道の駅オホーツク紋別と巨大なカニの爪オブジェ
オホーツクスカイタワーの絶景に別れを告げ、山を下って「道の駅 オホーツク紋別」へと向かう。

敷地内には「流氷科学センター」という施設があり、ぜひ寄りたかったのだが、不運にも今日は休館日だった。

一人旅に予期せぬトラブルはつきものだ。これも巡り合わせということで諦めよう。
幸い、道の駅の周辺には海浜公園が広がっており、見どころが多い。
これから向かう予定の「オホーツクタワー」も海の上にそびえ立っている。

公園の芝生には、紋別のシンボルとも言える巨大な「カニの爪」のオブジェがあった。

大迫力である。
少し歩くと「カリヨン広場」という場所に出た。


カリヨン(カリオン)とは、複数の鐘を組み合わせてメロディを奏でる楽器のことだ。
私の地元である新潟県の月岡温泉にも、「カリオンパーク」というよく似た施設がある。

紋別のカリヨンも、きっと定刻になれば港町に美しい調べを響かせるのだろう。
ここから海上のオホーツクタワーまでは少し距離があるが、港の景色を楽しみながら歩いて向かうことにした。



……いや、歩いてみると想像以上に遠かった。
今日は早朝から長距離を運転し続けており、体力的にもかなり疲弊している。
このまま意地を張って歩けばタワーには辿り着けるだろうが、帰り道で力尽きてしまうかもしれない。
無理は禁物だ。潔く引き返し、素直に車で移動することにした。
氷海展望塔オホーツクタワーへ続く堤防
車に乗り込み、オホーツクタワー専用の駐車場まで移動してきた。

ここから先は車が入れないため、海へ向かって長く突き出た防波堤の先端まで、歩いて向かう必要がある。
後からタワーの職員さんに聞いたのだが、駐車場からタワー入り口までを往復する無料の送迎バスも運行しているそうだ。


途中、階段を登って一段高い堤防の上へ出てみた。
堤防沿いでは、地元の人らしき太公望たちが何人か釣り糸を垂らしていた。

サビキ釣りや投げ釣りなど、釣り方は様々だ。
豊かなオホーツクの海。いったいどんな魚が釣れるのだろうか。

ふと陸側を振り返ると、山の上に塔が見えた。
あれは少し前に登った「オホーツクスカイタワー」に違いない。

港には、特徴的な赤い船体の流氷観光砕氷船「ガリンコ号Ⅱ」が停泊していた。

ドリルで氷を砕きながら進むその勇姿を、流氷が接岸する真冬の時期にぜひ一度体験してみたいものだ。
潮風に吹かれながら歩き続け、ようやくオホーツクタワーの足元に到着した。

タワーの根元部分は海面に突き刺さるような構造になっており、見下ろしていると吸い込まれそうで少し足がすくむ。

オホーツクタワー地下水族館と謎の観察窓
連絡橋を渡り、いよいよ塔の内部へ入る。


オホーツクタワーは、海上の1階から3階までは無料で入場できるが、海中にある「海底階(地下階)」は有料エリアになっている。
せっかくここまで来たのだから、もちろん地下にも行きたい。受付で入場料を支払い、入館証のワッペンを受け取った。
まずは目玉である地下階へ向かう。
エレベーターもあるが、気分を高めるためにあえて階段で降りてみることにした。

階段を下りていくにつれて、空気がひんやりと冷たくなっていくのが肌で感じられる。

海底階に到着した。

ここはミニ水族館になっており、分厚いアクリル窓越しにオホーツクの海中の様子を直接観察できるのが最大の特徴だ。
今回、北海道を一周した中で「一、二を争うほどマニアックで面白かった展示」が、この海底階にあった。
それが、ある一つの観察窓だ。

(あまりに生々しいので拡大写真の掲載は自粛しておく)
横の立て看板には、「この窓はあえて4年間清掃していません」と書かれている。
自然の海中で放置された窓には、巨大なホタテやヒトデ、小さな貝類、藻類、そして堆積した謎の有機物がびっしりと付着している。
中には、正体不明のウネウネ・グネグネとした奇妙な生物まで蠢いていた。
一見すると不気味で気持ち悪いのだが、リアルな生態系が凝縮されたその小宇宙に、私は思わず時間を忘れて見入ってしまった。
もし、この窓ガラスにへばりついて何時間も眺めているような子供がいたら、将来有望な海洋生物学者になれる器だと思う。
スマホに取り付けるマクロレンズなどがあれば、こうした微小な生物の観察もより一層楽しめるかもしれない。
ちなみに、定期的に清掃されている窓は、このようにクリアで外の海がよく見える。

おそらくダイバーが冷たい海に潜って外側から清掃しているのだろう。
この暗く冷たいオホーツクの海に潜る仕事だと思うと、想像しただけで背筋が凍る。私には絶対に無理だ。
水槽展示には、北の海の魚たちが並んでいる。
こちらは強面なオオカミウオ。

稚内の寒流水族館でも出会った、北海道水族館のレギュラーメンバーである。
巨大なチョウザメが泳ぐ水槽もあり、ガチャガチャで専用の餌を買って与えることができるようになっていた。



流氷の海に生息する生き物たちの特別展示もあった。

こちらが「流氷の天使」クリオネの水槽だ。

想像していたよりも、ずっと小さい。

生きたクリオネを直接見るのは、これが初めての経験だ。
小さな羽をパタパタと動かして泳ぐ姿は、確かに天使のように愛らしい。
タワーの海底観察窓からは、季節によって様々な生き物の生態を垣間見ることができるそうだ。
夜間営業の時にはライトの光に集まる無数の魚群が見えたり、流氷の時期には野生のクリオネが泳ぐ姿が直接観察できることもあるという。
山の上のスカイタワーと同様に、この海中タワーも、季節や時間帯を変えて何度も訪れたくなる魅力的な施設だった。
展望ラウンジからの流氷の海とウミウの群れ
海底階をたっぷりと堪能し、エレベーターで地上へ戻ってきた。
次は2階の展示スペースへ向かう。
2階では、流氷やオホーツク海に関する映像の上映、そして絵画や写真のパネル展示が行われていた。

一通り展示を見終え、最上階の3階へと階段を登る。

3階は360度を見渡せる円形の展望ラウンジになっており、カフェも併設されている。

温かいコーヒーを飲みながら、眼下に広がる大海原をゆったりと楽しむことができる、贅沢な空間だ。
外の空気を吸える屋外テラスにも出られるようになっている。

ふと下の防波堤を見下ろすと、カモメたちがびっしりと羽を休めていた。

その中に混じって、黒いウミウ(海鵜)もいる。



海上に建つタワーならではの、遮るもののない素晴らしいパノラマビューだ。


内部の展示と景色を一通り満喫し、オホーツクタワーを後にした。
長い防波堤を歩いて戻る途中、行きには気づかなかったが、足元のコンクリートの壁面に何やら不思議な模様が描かれているのを見つけた。

これは「流氷の一生」を表現したアートボードなのだそうだ。

どこまでも続く流氷の海を思い描きながら、車へと歩を進めた。
