自然体感占冠(しむかっぷ)を抜け、富良野へ
昼食を済ませ、日高を出発。
ここからは占冠村へと向かい、国道237号をひたすら北上していく。
本日の目標は、占冠村から富良野を抜け、旭川の近くまで移動することだ。
夕張から日高までの国道274号線がかなり長く感じられたが、地図で確認すると、これから先の行程はさらに長い距離を運転しなければならない。
山道を走り抜け、占冠村へと入った。

占冠と書いて「しむかっぷ」と読む。
北海道に来てから難読地名をいくつも見てきたが、その中でも「しむかっぷ」は特に独特の響きを持つ地名だと思う。
北海道の地名の大半は、先住民族の言葉であるアイヌ語がルーツとなっている。
アイヌ語の音に対して、似た発音の漢字を当てはめたものが現在の地名だ。
時には「神威(カムイ)」のように、アイヌ語の元々の意味と、当てはめた漢字の意味が見事に一致しているものもある。先人たちが、音と意味の両方を可能な限り残そうと苦心した跡がうかがえる。
道の駅の解説看板によれば、「しむかっぷ」とはアイヌ語で
甚だ静かで平和な上流の場所
を意味するのだそうだ。
その美しい名の通り、占冠村一帯はとても静かで、のどかな空気が漂っていた。

道の駅の掲示板には、ヒグマの出没情報が張り出されていた。

道の駅の周囲を歩いていると、現在の気温を表示する電光掲示板があった。

道理で暑いわけだ。
本州にいるときは「北海道はどこも涼しい」と勝手に思い込んでいたのだが、真夏の日中はちっとも涼しくない。
ただし、日が沈むと嘘のようにスッと気温が下がるため、熱帯夜にならず車中泊がしやすいのは救いである。

富良野の中心「へそ神社」で旅の安全を祈願
一日の行程はまだまだ続く。
富良野を目指し、さらに国道を北へとひたすら走る。
夕張から日高までの国道は、両側を深い山に阻まれ、景色が単調で退屈だった。
しかし、今走っている道は進むごとに少しずつ視界が開け、風景が変化していくため、長距離でも走り飽きない。
深い木立の道を抜けると、突如として市街地へと出た。

幅の広い道路が、地平線の彼方まで一直線に伸びている。
この先、何度となく目にすることになる、「いかにも北海道」というスケールの大きな道だ。
市街地を抜けると再び視界が広がり、今度は左右に雄大な山並みが姿を現す。
西には切り立った芦別岳がそびえ、東には大雪山系の山々が連なっている。
周囲を見渡せば、なだらかな丘陵地帯がどこまでも続き、その斜面はパッチワークのように美しい農地として利用されていた。
大雪山の方面は厚い霧に包まれており、その全容を拝むことはできなかった。
景色を楽しんでいるうちに、富良野の市街地へと到着した。
富良野駅周辺の様子。

占冠から相当な距離を走ってきたはずだが、景色に見とれていたためか、体感時間はあっという間だった。
途中でドラッグストアに寄り、トラベル用の小さなシャンプーとボディソープを購入した。
車中泊旅で利用する日帰り入浴施設や銭湯では、石鹸類が備え付けられていないことも多いのだ。
長旅の入浴には、トラベルセットを車に積んでおくと非常に便利である。
買い物を済ませ、駅のすぐ近くにある「北眞神社(通称:へそ神社)」を見つけたので立ち寄ってみる。

富良野が北海道のちょうど地理的な中心、つまり「へそ」にあたることから、この名が付けられたそうだ。
ここは分祠であり、本祠は市内を一望できる別の場所にあるという。
境内には「へそ絆石」なるものが鎮座していた。

真ん中の穴の両側から、二人で手を結びあうとご利益があるそうだ。
悲しいかな、私は気ままな一人旅である。そっと一人で石に触れた。

これからの北海道一周の無事と成就を願い、おみくじを引き、交通安全のお守りを購入した。


おみくじの結果は……。旅のモチベーションを上げてくれる内容だった。
雄大な丘陵風景「フラワーランドかみふらの」
富良野市街から、さらに北へ。
ここから先は、中富良野町、そして上富良野町と走っていく。
富良野周辺の市街地は、国道237号に沿って南から順に「富良野市」「中富良野町」「上富良野町」と分かれている。
中富良野町と上富良野町は名前に「富良野」と付くものの、行政区分としては富良野市ではなく空知郡に属しているという、少しややこしい関係にある。
余談だが、私が住んでいる新潟県は、南から北に向かって「上越」「中越」「下越」と区分されている。
これは昔、都(京都)に近い方を「上」とした名残なのだろう。
つまり、富良野エリアとは「上・中・下」の位置関係が見事に逆転しているのだ。
中富良野町の中を走り抜ける。
道路の標識のポールが、綺麗なライラック色で統一されていた。
北海道の各市町村は、街灯や標識に独自の凝ったデザインを採用していることが多い。
そういった細かな装飾の違いを眺めながら町々を巡るのも、ドライブの密かな楽しみである。
道路沿いにラベンダー園の標識を見つけたので、寄り道してみることにした。

やはり、ラベンダーが咲き誇る時期にはまだ早かったようだ。

7月ごろの本格的な開花時期になれば、この広大な丘が一面、鮮やかな紫のラベンダー色に染まるのだろう。
想像するだけで見ごたえのある景色だ。
上富良野町をさらに北へ進み、市街地を抜ける。
本日のもう一つの目的地、「フラワーランドかみふらの」へと向かう。
富良野周辺には、ラベンダーをはじめとする色彩豊かな花畑が、観光スポットとして点在している。
まだ満開の時期ではないと分かってはいても、北海道らしい広大な花畑のスケール感だけでも味わっておきたかったのだ。
白樺の美しい林を抜け、フラワーランドかみふらのに到着した。
街路樹として白樺が涼しげに並んでいるのも、非常に北海道らしい景観である。

広大な駐車場からは、早くも花畑の全容が見渡せた。

花のピークには早いものの、それでも丘を彩るストライプ模様は十分に美しい。
土産物屋の建物を抜け、いざ花畑の散策へ。
広すぎる園内を、トラクターが牽引するバスに乗ってのんびりと回ることもできるそうだ。

背景には、雄大な大雪山系の山々がそびえている。






富良野周辺のガーデン最大の特徴は、平坦な土地ではなく「小高い丘陵地帯」を立体的に利用して花畑を作っている点にある。

そのため、遠くの山々や広大な空といった雄大な景色を背景として、花々の色彩をダイナミックに楽しむことができるのだ。


丘の上には東屋が設けられており、そこからガーデン全体を一望することができた。

花がまだ十分に咲きそろっていないこの時期でさえ、息を呑むほど壮観な眺めだ。
ハイシーズンとなる7月には、満開の花々と大勢の観光客で、さぞかし華やかな空間になるのだろう。
爽やかな風に吹かれながら、一通りの景色を目に焼き付けた。
さて、そろそろ次の目的地へと車を走らせるとしよう。
