国後島を一望する道の駅
道の駅に戻ってきた。
ウトロのクルーズ船といい、どうも私は霧に嫌われているらしい。
いや、行く先々で霧に包まれるのだから、好かれていると言うべきか。
先ほどの公園は霧で真っ白だったが、道の駅周辺はすっきりと見晴らしが良い。
昨日は遠くの沖まで見渡せなかったが、今日は海の向こうに国後島がくっきりと見えている。

羅臼から国後島は、驚くほど近い。

ふと足元に目をやると、海辺のテトラポッドから湯気が立っていた。

風に乗って強い硫黄の匂いが漂ってくる。
テトラポッドが黄色く変色していることからも、温泉の蒸気が噴き出しているようだ。
大地が生きていることを実感する。
知床食堂の絶品「黒ハモ丼」
これから道の駅で食事をとり、背後の高台に見える「羅臼国後展望塔」へ向かおうと思う。

二階の「知床食堂」に入り、どうしても食べたかった黒ハモ丼を注文した。

立派なホタテの味噌汁が付いてきた。
昨日のうに・ほたて丼にはカニ汁が付いていたので、仕入れによって変わるのかもしれない。

この黒ハモ丼は、るるぶ北海道(2025年版)で見かけてから、現地で絶対に食べようと決めていた一品だ。

それにしても、この黒ハモ丼は美味すぎる。

細かく骨切りされているため、小骨がまったく気にならない。
皮は香ばしくパリッと焼かれ、ほどよく効いた山椒が食欲をそそる。
朝はあまり食欲がない方なのだが、箸が止まらずあっという間に完食してしまった。
毎日でも食べたいと思える味だ。
ここ知床食堂には、他にも魅力的なメニューがたくさん並んでいる。

イバラガ二カレーに、魚の煮付け定食。
ガサエビ焼きという、大きなエビを丸ごと一匹焼いた豪快な料理もある。
羅臼は温泉も素晴らしいし、何より食べ物が美味い。
もちろん他の町も魅力的だが、どうやら羅臼は私と波長の合う町のようだ。
もう一泊しようかと本気で悩んだが、この先にも見たい景色が山ほどある。
後ろ髪を引かれる思いで、先へ進むことに決めた。
ウトロの観光船に乗れなかったことといい、知床には心残りがたくさんできた。
必ずまた、この町に戻って来よう。
食後のデザートに、北見のハッカ記念館で買っておいた薄荷羊羹を取り出した。


見た目はごく普通の羊羹だが、口に入れると後味にハッカの爽やかな清涼感が長く残る。
北方領土に想いを馳せる羅臼国後展望塔
お腹も満たされたところで、高台の展望塔へ向かう。
ふと見上げると、展望塔はまたしても霧に包まれかけていた。

先ほど下から見た時はくっきり見えていたのに、山の天気は本当に変わりやすい。
道の駅を後にし、車で坂を上って展望塔に到着した。

入り口には、北方領土返還を願うモニュメントが建てられている。

館内に入ると、北方領土が不法占拠された経緯が分かりやすく展示されていた。

北方領土が我が国の領土であるという歴史的根拠が、詳細なパネルで説明されている。


北方四島の過去と現在の写真を比較するコーナーもある。

パネルの一文に目が止まった。
北方領土は、(中略)私たちの父祖が血と汗で開拓した我が国固有の領土
北方領土問題の根底にあるのは、まさにこの部分ではないだろうか。
決して比喩などではなく、先人たちが文字通り血と汗を流しながら切り拓いた土地。それを突然奪われてしまったのだ。
「無念」という言葉だけでは、到底片づけられない重みを感じる。
展望塔から見つめる近くて遠い島
館内で資料をもらい、屋上の展望スペースへ上がってみた。



眼下には、先ほどまで歩いていた羅臼の市街地が広がっている。

そして彼方には、国後島が横たわっている。


私も含め、今の若い世代はどのぐらい北方領土に対して関心をもっているだろうか。
正直なところ、私は今まで問題の存在を知ってはいたが、強い関心を持っているとは言えなかった。

それが北海道を旅し、こうして現地の空気に触れたことで、今まで以上に興味と関心を持つようになった。
羅臼からは、常に国後島が対岸に見え続けているのだ。

こんなにも近くに島影が見えれば、否が応でも意識せざるをえない。
この後、羅臼から根室まで海岸沿いをドライブしたのだが、その間もずっと左手には国後島が見えていた。
海岸沿いには、北方領土関係の資料館も多く点在している。
深くこじれてしまった歴史的な問題は、そう簡単に解決できるものではない。
だからこそ、現地からの声を広く周知し、後世へとつないでいかなければならないのだろう。
ふと背後を振り返ると、壮大な羅臼岳が顔を覗かせていた。

6月だというのに、頂上付近にはまだ雪が残っている。

色々な思いを胸に抱きながら、展望塔を後にした。
