疲労困憊の末に得た教訓
神威岬の観光を終え、再び小樽市街へと車を走らせる。
この時点で、私の体力は限界に達していた。
新潟から小樽へと続くフェリーの旅では、北海道への期待と不安が入り混じり、十分な睡眠がとれなかったからである。

追い打ちをかけるように、運動不足の体で島武意海岸と神威岬の険しい遊歩道を散策した。
厳しい日差しと気温の高さが、じわじわと体力を奪っていく。

あまりの暑さに、海岸沿いの駐車場に車を停めて着替えを済ませる。
窓を開けると、北の大地らしい涼しい風が吹き込んできた。
これなら熱中症の心配もないだろう。
そう安堵した瞬間、意識が遠のき、私は泥のように深い昼寝に落ちた。
目が覚めても、体調はすっきりとしない。
重い体を引きずるようにして、とりあえず小樽方面へと車を動かした。
道の駅「スペース・アップルよいち」ととうきび茶
小樽の手前、余市町にある道の駅「スペース・アップルよいち」に立ち寄る。

喉の渇きを潤すため、自販機で「とうきび茶」を購入した。
一口飲むと、驚くほど濃厚なトウモロコシの風味が口いっぱいに広がる。

北海道に来たことを改めて実感させてくれる、素朴で優しい味わいである。
とても美味しいので、興味のある方はぜひ試してみてもらいたい。
心身を蘇らせる「よいち観光温泉」の名湯
体調のせいか、何をやっても空回りしているような、しっくりこない感覚が続く。
「とにかく風呂に入りたい」
その一心で、スマートフォンの画面を頼りに近くの入浴施設を探した。
見つけたのは「よいち観光温泉」。迷わずそこへ向かうことにした。

結果から言えば、ここが最高だった。
建物は昔ながらの銭湯といった趣で、浴室には見たこともない古めかしい形状の蛇口が並んでいる。
シャンプーやボディーソープの備え付けはないが、それがまた潔くて良い。
浴槽は「熱い」「ぬるい」「水風呂」の三種類。
特にぬるい湯は絶妙な加減で、いつまでも浸かっていられる心地よさだ。
サウナでじっくりと汗を流すと、澱んでいた気力と体力がみるみる回復していくのが分かった。
旅先で無理は禁物である。
「疲れているときは、まず風呂に入るべし」
このシンプルな真理を、身をもって学んだ。
そういえば、濡れたタオルをどうしたものか。
車の取っ手にロープをかけ、そこに干しておくことにした。
乾くのに少し時間がかかるだろう。
入浴するときは普通のタオルではなく、速乾タオルを使った方が便利かもしれない。

夕暮れの小樽運河、歴史の面影を辿る
体力が戻ると、不思議と空腹を覚えるようになった。
車を走らせ、ようやく小樽の街へ戻ってくる。
小樽駅近くの有料駐車場に車を預け、運河の方へと歩を進める。
「小樽といえば運河」という定番のイメージを裏切らない、実に見事な景観が広がっていた。


運河沿いのレリーフには、小樽の歩んできた歴史が刻まれている。
北海道開拓の玄関口として産声を上げ、かつて「北のウォール街」と呼ばれるほど商業や金融で栄華を極めた街。

現在の運河は、多くの観光客で賑わう一大名所となっている。
周囲を見渡せば、日本人よりも外国からの旅行者の方が多いのではないかと思えるほどだ。


観光船が静かに水面を進み、人力車が小気味よい音を立てて駆け抜けていく。
立ち並ぶ重厚な倉庫群は、今では洒落た飲食店やショップとして再利用されており、裏側に回るとその賑わいが伝わってきた。


金融街の威容と、和洋折衷の堺町通り
運河を離れ、小樽駅の方へと足を向ける。
通りを一つ変えるだけで、街の表情は劇的に変化した。

かつての金融街を彷彿とさせる、重厚な石造りの建築が並ぶ。
さらに歩を進めると、土産物店が軒を連ねる「堺町本通り」に出た。

修学旅行生や外国人観光客が入り乱れ、活気に満ち溢れている。
この一帯は「小樽歴史景観区域」に指定されており、和と洋が絶妙に融合した独特の街並みが美しい。
ふらりと入ったガラス細工の店では、光を浴びて輝く繊細な品々に見惚れてしまった。

賑やかな通りを抜けると、小樽の歴史を紹介する静かな展示施設を見つけた。
雑踏を離れ、静寂の中でかつての「黄金の日々」に思いを馳せる時間は、一人旅ならではの贅沢である。


