ラッシングベルトの選び方・使用荷重と長さについて
このページでは、ラッシングベルト(タイダウンベルト・ラチェットベルト)という荷締め機付きのベルトについて、使用荷重と長さの選び方を紹介します。
ベルトを車載に使う場合、使用荷重の選び方が少々厄介になるので、選び方を詳しく書いています。
ラッシングベルトの使い方については、ラッシングベルトの使い方についてのページをご覧ください。
ラッシングベルトについて
ラッシングベルト
商品によって長さや強度が決まっているので、固定したい荷物に合わせて選ぶようにします。
私はカヤックを車載する際、このラッシングベルトで固定しています。
ラッシングベルトは、器械の力で荷物を頑丈に固定することができます。
車に、カヤックなどの重くて大きい物を固定するとき、人力でベルトを使って固定しただけでは、走行中が不安です。
ベルトが緩んで外れてしまうかもしれませんし、もしも荷物が道路に落ちたら、大事故につながりかねません。
そこで、このラッシングベルトを使って頑丈に荷締めします。
ラッシングベルトの使用荷重と車載の場合の注意点
ラッシングベルト選ぶ際は、パッケージに書いてある、使用荷重と長さを見ます。
例えばこのベルトは、ベルト長さが全長5mで、使用荷重120kgと書いてあります。
まずは使用荷重についてみていきましょう。
ベルトの使用荷重というのは、静止した荷物をベルトでそのまま吊り下げた場合の耐用加重です。
例えば、私のカヤックは25kgぐらいですが、上の使用荷重120kgのベルトでただ吊り下げるだけならば、何ら問題ありません。
ところが、ベルトを車載に使う場合は厄介です。
ベルトで荷物を車載する場合は、単純に荷物の重量が使用荷重を超えなければOKとは言えません。
「私の25kgのカヤックは、ベルトの使用荷重120kgより軽いから、上のベルトをカヤックの車載に使っても問題なし」とは簡単に言えないということです。
何故ならば、走行する車にカヤックをベルトで取り付けているわけなので、車が急ブレーキをかけたりすれば、ベルトには25kg以上の力がかかることがあるからです。
車載の場合のベルトの使用荷重(結論)
ここからは話が複雑になるので、まず結論から書いておきます。
荷物を積んで運転しているとき、(事故が起きた場合などを除けば)荷物に一番大きな荷重がかかるのは、車が急ブレーキをかけたときです。
それを踏まえてベルトの使用荷重を計算してみると、結果は以下のようになります。
例えば、時速60kmで荷物を運ぶ場合、荷物の重量(kg)を2倍してみて、ベルトの使用荷重がその値を余裕を持って上回っていれば、その荷物をそのベルトで運んでいるときに、急ブレーキをかけたとしても大丈夫です。
※あくまで簡単なモデルで計算した数値であり、この数値を利用する場合は自己責任で利用してください
※荷物の運搬中に無茶な運転をした場合や、ベルトの使い方が間違っていた場合、ベルトが痛んでいた場合などは、この限りではありません
例えば、私のカヤックは25kgぐらいの重量なので、その値を2倍すると50kgになります。
上のベルトの使用荷重は120kgであり、50kgを悠々と超えているので、この場合は時速60kmを出していて急ブレーキをかけるようなことがあっても大丈夫ということになります。
・時速70kmで走る場合も、荷物の重量(kg)を2倍して、ベルトの使用荷重と比べてください。
・時速80kmなら、荷物の重量を2.5倍にして、ベルトの使用荷重と比べてください。
この数字の根拠については、ページ最後の備考に書いています。
簡単なモデルを使った使用荷重計算ツール(シミュレーション)
簡単な計算モデルを使い、車の速度と荷物の重量などから、急ブレーキをかけた時にベルトにかかる力を計算するツールを作りました。
※くどいですが、あくまで簡単なモデルを使って計算したものです
自己責任でご利用ください
下の数値を入力し、計算ボタンを押してください。
kgの荷物を車載し、
時速kmを出していた時に、
秒かけて停まった場合
ボタンを押して出てきた値が、急ブレーキをかけた時に荷物にかかる荷重です。
ベルトを選ぶときは、その値以上の使用荷重の物を選べば良いということになります。
色々と数値を変えてみると、車の速度が速いほど、そして荷物が重いほど、荷物にかかる荷重が大きくなることが分かります。
ベルトの長さの選び方
さて、次にラッシングベルトの長さについてです。
使用荷重に比べ、長さの選び方は簡単です。
事前に必要な長さを測っておき、それより長いものを選んでおけばOKです。
必要な長さに対し、ベルトの長さがギリギリにならないようにしましょう。
ベルトは後で短くすることもできるので、購入するときにできるだけ長いものを選んでおくのが良いと思います。
ラッシングベルトの長さ調節
ベルトは長すぎると扱いにくくなります。
一つのラッシングベルトで同じ荷物を運び続けるようであれば、荷物を固縛したときに、丁度良い長さに切ってしまいましょう。
機械で荷締めしてから、ベルトの余りを切ってしまいます。
切るときはあまり長く切りすぎないように、余白を多めに残しておきましょう。
切ったら、必ず端をライターなどで炙っておきます。
よく炙っておかないと、ほどけてバラバラになるので要注意です。
備考1:車載した荷物にかかる荷重の計算モデル
以降の備考では、車が急ブレーキをかけたときに、荷物にかかる荷重を計算してみます。
先に書いたように、ラッシングベルトを使って荷物を車載する場合、使用荷重の考え方が難しくなります。
車が急ブレーキをかけたりすれば、ベルトには荷物の重量以上の力がかかることがあるからです。
それだけでなく、使うベルトの本数、ベルトの巻き方、荷物と接触面の摩擦なども、ベルトが受ける力に関わってきます。
これらも考慮すると、いつまで経っても計算が終わらないので、とりあえずこれらのことは計算に含めないでおきます。
車を運転していて一番荷物に力がかかるのは、車が急ブレーキを踏むなどして、速度が変わった時です。
これからの計算では単純に、車が急ブレーキを踏み、そのときの力がそのままベルトにかかったと仮定して、ベルトにかかる力の大きさを計算してみましょう。
計算には高校物理の知識を使います。
備考2:高校物理で急ブレーキ時の荷物にかかる力を計算
ケースとして、時速60kmで走っていた車が急ブレーキをかけ、1秒後に停止した場合を考えてみます。
結構無茶なケースであり、この場合はかなり大きな加速度が生まれ、荷物は大きな力を受けることになります。
こんな無茶な場合でも耐えられるようにしておけば、大体どんな場合にも耐えられるでしょう。
荷物は私のカヤックと同じ、25kgの重量としてみましょう。
高校物理で習う運動方程式
ma=F
⇒F=ma
から、右辺を計算してFの値を求めつつ、Fをkgに変換して、ベルトにかかる重量を求めます。
このとき、m=25kg。
aの計算は単純化して、平均の速度を使います。
a=(60-0)/1
=60(km/時)
ただし、上の計算で出てきた60とか0とかの速度は、時速〇kmという単位なので、これを秒速〇mという単位に直します。
そうしないと運動方程式で計算できません。
単位を変換するには、先ほどの60を3.6で割ります。
すると、
a=60÷3.6(m/秒)
運動方程式の右辺にmとaの値を代入し、
25×60÷3.6=416.666…
=417
となります。
さて、急ブレーキで荷物にかかる荷重をM(kg)とすると、運動方程式は、
F=416.666…
⇒M×9.8=416.666…
となるので、運動方程式の両辺を9.8で割り、
M=416.666…÷9.8
=42.5…
=43(kg)
となりました。
時速60kmで走っていた車が急ブレーキをかけ、1秒後に停止した場合、ベルトには43kgの荷重がかかるということです。
43kgといえば、荷物の重量25kgの1.72倍。
ベルトの選び方の話の中で、時速60kmで走る場合、ベルトの使用荷重の目安は、荷物の重量の2倍だと書いていました。
1.72倍を超える数字の中で、キリが良くて分かりやすく、また、数字に余裕を持たせるために、2倍という数字をセレクトしました。
2倍よりも低い使用荷重のベルトを選んでも、計算上は大丈夫ということですが、実際の使用時はもっと色々な要因が絡んでくるので、余裕を持たせておいた方が良いでしょう。
なお、時速70kmで急ブレーキをかけた場合で計算すると、1.98倍。
時速80kmで急ブレーキをかけた場合は2.27倍となります。
そのため、キリの良い数字として、それぞれ2倍、2.5倍と書きました。
ちなみに、この2倍や2.5倍という値は、荷物を重くしても変わりません。
このページある、「簡単なモデルを使った使用荷重計算ツール」は、これまでの計算を一般化して作りました。
関連ページ
ラッシングベルトの使い方については、ラッシングベルトの使い方についてのページをご覧ください。
また、私はカヤックを車に固定するのにラッシングベルトを使っています。
以下のページに、重いカヤックの持ち運び方や、車載の道具、車載に適した車などを書いています。
カヤックフィッシングの始め方を書いたサイトもあります。