自由にどこへでも行けるということ

カヤックフィッシングの面白さの一つ目は、広い大海原のどこへでも行けるということです。 沖に突き出た岩礁でも、陸からでは届かないテトラポッド周りでも、文字通り好きな場所で釣りができます。 他の釣り人を気にすることなく、釣りたい場所で釣りができるというロマンがあります。

自分だけの舟が手に入るということ

沖に出て釣りをしたい場合、普通は船をチャーターしなければいけません。 自分のカヤックを手に入れれば、好きな時に好きなポイントで釣りをすることができます。 自分の力で沖に漕ぎ出して釣りができるというのはとても楽しく、実際にたくさんの魚が釣れます。 釣りだけでなく、カヤックに乗ること自体を一つのアクティビティーとして楽しむこともできます。 沖の岩場や岩礁の裏など、陸からは行けない場所に行ってみるのも楽しいです。

沖は釣れる

陸から釣るよりも沖に出たほうが魚が釣れます。 色々な理由がありますが、まず単純に、沖のほうが魚の絶対数が多いです。 ナブラの起こり具合だけ見ても、陸近くよりも沖の方が、はるかに頻度が多く規模も大きいです。 水深20mぐらいになると、場所と時期によっては毎日のように、何時間もナブラが発生するようなことがあります。

深場を目指して

私はカヤックに乗り始めた頃、沖に出るのが怖く、水深10mに満たない場所で釣りをしていました。 これでは陸から釣るのと対して変わりませんし、カヤックでの釣りに慣れていなかったので全く魚が釣れませんでした。 カヤックに慣れ始めてから段々と沖に出るようになり、釣り方も分かってきたため、たくさん釣れるようになりました。 もちろん、慣れが一番怖いということをいつも念頭に置きながら、沖に出ています。 水深20mぐらいまで出ると、魚の種類も多さも、陸付近とはかなり違ってきます。 今まで出会ったことのない魚に出会えるという楽しみもあります。

沖はいくつもの顔を持つ

海岸端から海を見てみると、何の変哲もない水面が地平線まで続いています。 一見すると平坦な水面にしか見えませんが、カヤックで沖に出てみると、海は意外に多様な顔を持っていることが分かります。

水深15mが境界線

私がカヤックに乗り始めたころ、周りを見渡す余裕もなく、あまり遠くの沖にも出なかったので、陸からの釣りの延長という気分で釣りをしていました。 何も釣れなかったので、沖に出てもそれほど魚は居ないのだろうかと思っていました。 それが、少しずつ遠くに出られるようになってから、魚がたくさん釣れ始め、同時に沖で色々なものを見たり感じられるようになってきました。 何度か沖に出る中で分かったのは、（私がよく行く場所では）水深15mぐらいの場所が一つの境界になっているということです。 沖は沖でも、水深1桁～10m台前半ぐらいの沖と、水深15m以遠の沖では、雰囲気や魚の種類と数が違ってきます。

沖は孤独な世界

道路を走る車が点に見えるぐらい沖に出ると、陸からの音は一切聞こえなくなります。 周囲を見渡しても、浮んでいるのは自分が乗っているカヤックのみです。 無音の中で鏡のような海に囲まれていると、何とも幽玄な、現世から隠世に入ったような気がしてきます。 今までいた世界とはがらっと変わってしまったような、異世界に入り込んだような気分になります。

海と一体化

また、カヤックとともにふわふわと漂っていると、次第に自分のリズムが海のリズムに合わさり、海と一体化しているような感じになってきます。 この感覚は何とも心地よく、つい眠ってしまいそうになります。

秋は物寂しい

秋も深まる10月ごろにカヤックに乗ると、海上を吹き抜ける高い風音がするようになります。 渡り鳥が上空を飛んで行くのが見え、とても寂しい気分になってきます。 このように、沖に出ると普段味わえないような雰囲気を体験することができます。

沖で様々な出来事に遭遇

他にも、沖では様々な出来事に遭遇しました。 大きなイカやボラの死骸に海鳥が集まっていたり、春先に大きなアオリイカが浮いているのを見たりもしました。 カヤックの辺り一面でサゴシが飛び跳ねていたことも何度かありますし、カヤックの目の前にナブラが出現したこともあります。 そういえば一匹のイナダに付きまとわれたこともありました。 このイナダはいつまでもカヤックから離れず、ずっとカヤックに体当たりを続け、ルアーを落としても見向きしませんでした。 沖に出ると、陸では体験できないことや不思議なことがたくさんあります。