高校物理で導く「地球がブラックホールになる半径」




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第二宇宙速度とは?


 まずは第二宇宙速度のおさらいをしましょう。物体を星から宇宙に向けて飛ばすとき、物体は星からの万有引力を受けます。飛ばす速度が小さいと、物体は地表に落ちてきます。

 ところが、ある速度以上の初速度で飛ばすと、物体は星の周りを周り続けるようになります。この時の初速度を第一宇宙速度と呼ぶのでした。

 さらに物体の初速度を大きくしていき、ある初速度より大きくなると、物体は星を離れて無限の遠方に飛んでいきます。このときの初速度を第二宇宙速度と呼びました。




 この第二宇宙速度は、地球上では物体の質量に関係なく、約11.2km/sです。新潟から東京までの直線距離は約250kmなので、この速度は、新潟から東京まで22秒で行ける速度です。




 第二宇宙速度の式を求めてみましょう。力学的エネルギー保存の法則を使います。

無限遠を万有引力による位置エネルギーの基準とし、その値をゼロとする。
このとき、星の表面から飛び出た物体が、無限遠でも速度(運動エネルギー)を持っていたら、物体は無限遠まで飛んだと見なせる。力学的エネルギー保存の法則より、

(星表面での物体の力学的エネルギー)=(無限遠での物体の力学的エネルギー)

ここで、(無限遠での物体の位置エネルギー)=0なので、

(星表面での物体の力学的エネルギー)=(無限遠での物体の運動エネルギー)

式にすると、

$\frac{1}{2}mv^2-G\frac{Mm}{R^2}=\frac{1}{2}mu^2$
$(m:物体の質量 v:物体の初速度 G:万有引力定数$
$M:星の質量 R:星の半径 u:無限遠での物体の速度)$

前述の通り、$\frac{1}{2}mu^2\geqq0$であればよいので、

$\frac{1}{2}mv^2-G\frac{Mm}{R^2}=\frac{1}{2}mu^2\geqq0$

$\frac{1}{2}mv^2-G\frac{Mm}{R^2}\geqq0$

これを$v$について解く。

$\frac{1}{2}mv^2 \geqq G \frac{Mm}{R^2}$

$v^2\geqq\frac{2GM}{R^2}$

$v \geqq \sqrt{\frac{2GM}{R^2}}$

このことから、地表面での物体の速度$v$が、$\sqrt{\frac{2GM}{R^2}}$以上であれば物体は無限遠に飛び去ることが分かる。つまり、第二宇宙速度は$\sqrt{\frac{2GM}{R^2}}$である。



 これが、第二宇宙速度の表式です。物理では式が何に依存しているか又は何に依存していないかを見るのが大事です。式を見ると、第二宇宙速度は星の半径と質量に依存しており物体の質量によらないことが分かります。

 さらに言えば、星の質量が大きいほど第二宇宙速度が大きくなり星の半径が大きいほど第二宇宙速度は小さくなります。

 つまり、星の質量が大きいほど星からの脱出が大変で、星の半径が大きいほど星からの脱出が容易になるということです。





地球をどのくらい縮めたらブラックホールになるか


 表題のことを、第二宇宙速度の式から考えてみましょう。そもそもブラックホールとは何でしょうか。

 ブラックホールとは、あまりの万有引力の強さに、が脱出できない星のことを言います。が脱出できないため、われわれの目に星からのが届かず、その星は見えなくなります。




 「あまりの万有引力の強さに、が脱出できない」このフレーズを見て、第二宇宙速度の話が使えそうだと思いませんか?

 第二宇宙速度$\sqrt{\frac{2GM}{R^2}}$とは、物体が星から脱出できる最小の初速度でした。光の速度は一定であり、星の第二宇宙速度がその光の速度より大きければ、光は星を脱出できないことになります。このとき星はブラックホールであると言えます。

 これを式で表すと、

$c \leqq \sqrt{\frac{2GM}{R^2}}$ ($c$の速さ)

となります。




 では、地球をどれくらい縮めたらブラックホールになるのかを計算しましょう。まずは上の式を星の半径$R$について解き、次に$G,M,c$に数値を代入し、$R$の値を求めます。

 数値を代入するとき、$G,c$はそれぞれ定数なのでその値を代入しますが、$M$には地球の質量を代入します。

 そうして$R$の値を求めると、地球の質量はそのままで半径だけを変更した時、半径がいくつになるとブラックホールになるのかを求めたことになります。




 では$R$の値を求めてみましょう。

$c \leqq \sqrt{\frac{2GM}{R^2}}$

$R^2 \leqq \frac{2GM}{c^2}$

$R \leqq \sqrt{\frac{2GM}{c^2}}$

 この式の$G(万有引力定数),M(地球の質量),c(光速)$に、理科年表†1の値、

†1 :理科年表 平成26年

$G=6.67384 \times 10^{-11} [N・m^2・kg^{-2}]$
$M=5.972 \times 10^{24} [kg]$
$c=2.99792458 \times 10^{8} [m・s^{-1}]$

を代入し、有効数字で求めると、

$R \leqq 9.417 \times 10^{-2} [m]$

 となります。この計算により、地球の質量を変えずに半径$R$を9.417[cm]以下にすると、は地球から抜け出せなくなる、つまり地球はブラックホールになるということが分かりました。





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