【サダルストリートのしつこい客引きをまく】インドとネパールでの一ヶ月:その9
一ヶ月かけてインドとネパールを旅してきた時の記録です。
このページではサダルストリートでの一日目、サダルストリートを歩いていた時に出会った、しつこい客引きをまいた時のことについて書いています。
なお、このページでは「詐欺師」という言葉を多用しています。
詐欺師という言葉は、巧妙にこちらからお金を引き出そうと、道端などで話しかけてくる人を指すときに使っています。
ゲストハウスから外出
サダル近くのCentrepoint Guest Houseにチェックインした。
窓の外は道路に面しており、クラクションがうるさい。
窓を開けていると埃が入って来る。
さて、コルカタの空港を出たのが7:00過ぎで、今はまだ11:00だ。
ちょっと外に出てみようか。
サダルストリートの客引きたち
ゲストハウスから外に出て、少し南のサダルストリートへ。
サダルは詐欺師の巣窟だなんてどこかで聞いたことがある。
さてどんなものだろうか。
人から絡まれるなんて、普段の生活では経験しないことなので、ちょっとワクワクする。
なお、サダルストリートではほとんど写真を撮っていない。
写真を撮ったら因縁をつけられ、お金を請求されたなんて話を見たことがあったからだ。
サダルを歩いていると、やっぱり色々な人から声をかけられる。
まずはタクシー運転手。
タクシーがたくさん停まっており、そばを通るたびに運転手たちから声をかけられた。
リキシャーという人力車もいて、その俥夫(引き手)からも声をかけられる。
10歩歩くごとに何かしら声をかけられる感じだ。
やっぱり有名な場所は客引きが多い。
とりあえずここまで全て無視して歩いた。
気味の悪い男
そのうち気味の悪い男が寄ってきた。
後ろからか細い声で、「ハロー・・・ハロー・・・」と言いながらついてくる。
声に覇気がなく、非常に不気味。
ひたすら無視し、サダルから他の通りに入ったりもしてみたのだが、しつこくついてくる。
気持ちが悪い。
とにかく無視して歩き続けたら、いつしかいなくなっていた。
他にも、商店街のようなところを歩いている時、女の人が何やら紙を見せようとしてきた。
怪しいのでこれも無視。
あまりにもしつこすぎる詐欺師
不気味な詐欺師をまいた後、サダルに戻り、インディアンミュージアムの方に向かって歩く。
その途中、私より若そうな男に日本語で声をかけられた。
第一の前提として、路上で声をかけてくる人は、何らかの魂胆があって話しかけてきている。
日本語で話しかけられようが何だろうが、無視するのが基本だ。
声をかけてくる人はたくさんいるので、いちいち相手にしていたらキリがない。
その男のことも完全に無視して歩き続けるのだが、男はかなりしつこく粘り、そこそこ流暢な日本語で声をかけ続けてくる。
曰く、「私はヒンズー語も日本語も分かるから、何か困ったことがあったら力になれる」。
「今は中々日本人が来なくて、日本語をしゃべる機会が無いので、日本語を練習したい」とのこと。
ずっと無視していると、「インド人が嫌い?」とか言ってくる。
終いには、「警戒ばかりしていると、旅が面白くなくなるよ」とか抜かしている。
そんなことを言われたところで、全くこちらの心には響かない。
情に訴えるという言葉があるが、この男は情への訴えかけ方を間違えている。
ひたすら無視したが、それでも男はずっとしゃべりながら付いてくる。
コルカタの街並みを見ながら歩きたかったのだが、これではとても集中できない。
「ガイドは不要」と言っても、何のかんのと言いながら付いてくる。
仕方ない。
ちょっと話し相手になってやり、適当なところでまくことにしよう。
しつこい詐欺師との不毛なやり取り
向こうから「どこから来たか」とか「日本での職業は」とか聞かれ、それに答える形で会話をする。
彼の質問に答えるのは面倒くさい。
質問の答えを考えなくてはならないし、質問に答えたからといって会話が建設的になるわけでもない。
不毛だ。
彼がスマホの画面を見せてくるので、仕方なく見てみると、ラインの連絡先に日本語の名前がずらっと並んでいる。
こちらを安心させる手口なのかもしれないが、私は余計な連絡先を増やすのが嫌なタイプなので、そんなものを見せられても全く心に響かない。
むしろつまらん男だなと思ってしまう...
そう、彼はつまらないんだ。
こちらを懐柔しようとしてくるのだが、言動が薄っぺらいので、全くこちらに響いてこない。
男と会話をしながら、頭の中ではどうやってこの詐欺師をまこうかと考えていた。
理詰めでいくか、のらりくらりといくか。
強い口調、強い言葉で追い払うこともできるが、それでは芸がない。
できるだけ穏便に、スマートな方法で追い払ってみよう。
そこで、相手が嫌がる情報を出しながらペースを崩し、根負けさせる形に持って行くことにした。
仏道の修行でインドへ
まず話の折を見て、「自分は仏教者であり、インドに仏道の修行に来たのだ」と伝える。
しつこい客引きに絡まれたときはこう答えようと、日本にいたときから考えていたのだ。
何故こんなことを言ったのかといえば、いくつか理由がある。
まず第一に、路上で声をかけてくる人たちの目的は、十中八九お金である。
声をかけて相手を誘導し、土産物屋や旅行代理店に連れて行ってリベートをもらうとか、目的はだいたいそんなところだろう。
だからこそ、仏道の修行で来ていると言えば、あまりそういうところ(土産物屋や旅行代理店)に縁のない人物だと思わせることができるだろうと踏んでいた。
また、めんどくさい質問や提案も、全て「修行に来ているから」「お坊さんだから」で片づけることができる。
・観光地はいかないの?→修行に来ているから行かない
・土産は欲しくない?→修行に来ているからいらない
・美味しいレストランを教えようか→お坊さんだから断食してる
さらに、インドはヒンズー教が主流で、宗教を前面に押し出す土地柄だ。
街中に神様の像が置かれていたりする。
それに、街全体に他の宗教を尊重する気風もある。
道を歩いていた時に、イスラム教の人たちが道に広がって祈りをささげていたのを見たことがある。
周囲の人たちはその人たちを気遣い、祈りの邪魔をしないようにしていた。
そんな場所なので、自分が宗教者だと言っても、変な顔をされることはないはず。
詐欺師の男はブッダガヤ出身だというのを聞いていたので、それも一つ有利な点だ。
ブッダガヤはブッダが悟りを開いた地であり、仏教者にとっての聖地となっている。
年間を通して世界各地から仏教者が訪れる場所だ。
そういう場所の出身であれば、昔から身近に宗教者がいたはずなので、仏道の修行に来ていると伝えても違和感は無いだろう。
相手に揺さぶりをかける
さて、しつこい男に「自分は仏教者だ」と伝えると、向こうからそれについて質問が来る。
仏教の内容に踏み込んでくるものではなく、「実家がお寺なのか?」とか、「お寺を継ぐのか?」とかその程度だ。
「いつかお寺を継ぐこともあるかもしれません」と答える。
嘘はついていない。
そしてやっぱり会話が不毛だ(お坊さんだけに)。
そんなふうに話しながら歩いていると、今度は相手が先に立ち、私をどこかに先導しようとし始めた。
このタイミングで相手に揺さぶりをかけていくことにしよう。
男と一緒に歩いている途中、折を見て、彼のペースを崩す行動をとる。
・本屋のショーウィンドーを見つけたので、そこで立ち止まり、しばらく本の背表紙を眺める。
・景観の良い通りを歩いている時、カメラを出して立ち止まり、しばらく写真を撮り続ける。
・彼が行くのとは別の通りに行こうとする。
などなど。
要はワンちゃんの散歩と一緒で、相手の思い通りにさせず、あくまでこちらが行動の主導権を握るようにしていく。
彼は私を目的地まで連れて行きたいわけだが、私が何度も立ち止まるのでうんざりしてきたのだろう。
次第に歩くペースが早まってきた。
彼をまくのは今がチャンスだ。
十字路に来たとき、彼が進むのとは別の道に早足で行ったところ、もう彼が付いてくることはなかった。
「ラインを教えてくれ」という声が追いかけてきたが、無視してその場を去る。
しつこい客引きには遠慮するな
路上で声をかけてくる人間は信用するな。全部無視しろ。が鉄則であると思う。
親切そうに近づいてくる人を無視するのは、申し訳ない気分になるかもしれないが、遠慮する必要はない。
彼らは旅人の特権、すなわち自由な時間と行動を奪っているのだから。
私は人といるのが面倒で、常に一人でいたいタイプだ。
今回は、彼が付き纏ってきたおかげで、私の自由に街を見物する権利は奪われ、余計な時間を取られてしまった。
そもそも、こちらが無視しているのに話しかけ続けてくるのは、親切の押し売りである。
仮に、もし話しかけてきたのが一般人なら、こちらが無視するか「No」と言えば、すぐに引き下がるはずである。
それでも引き下がらず、延々と話しかけてくるのは、何か魂胆があるからに他ならない。
私利私欲のため、こちらの意志に反した行動をとり続け、こちらの行動を制限してくるのだから、そんな相手に遠慮する必要はない。
今回は穏便にまく手段を取ってみたが、別にそんなことをする必要もないのだ。
あまりにも煩わしければ、強く「NO!!」と言って断っても良いし、早足で逃げ出しても良い。
それにしても、サダルに来て初日でこんな調子では、先が思いやられる。
これからもこんな面倒くさい連中に絡まれるのだろうか。
人と関わるのは楽しいが、限度がある。
そんなことを考えながらゲストハウスに戻った。
※旅を終えた後の備考
インドとネパールの旅を通して、後にも先にも一番面倒だったのがこの詐欺師であり、自分は仏教者だという方便を使ったのもこのときだけだった。
今回、詐欺師を追い払うのに遠回しな手段を使ったが、旅を終えた今ならもっとうまく対応できる。