濃霧の納沙布岬と、ヒグマとの遭遇
北海道一周一人旅、十日目の早朝。本土最東端の納沙布岬(のさっぷみさき)で目を覚ました。
少し外の空気を吸いに、岬の周辺を散歩してみよう。
岬一帯は、見渡す限りの濃い霧にすっぽりと包まれていた。

ここ納沙布岬は、離島を除けば日本で一番早く日の出が見られる場所だ。
素晴らしい朝日を拝めると楽しみにしていたのだが、この分厚い霧ではとても朝日どころではない。


霧の中を歩いていると、ハクセキレイがピョンピョンと跳ねているのを発見した。

こちらは一瞬スズメかと思ったが、よく見るとヒバリのようだ。

本当は納沙布岬周辺の観光施設も巡りたかったのだが、開館時間までにはまだかなり間がある。
今日の目的地はここからずっと西の内陸部であり、移動距離が非常に長い。そのため、朝の早いうちに少しでも距離を稼いでおきたく、早々に岬を出発することにした。
まずは、昨日ここへ来るまでに通ってきた「道の駅 スワン44ねむろ」を目指して車を走らせる。


道の駅の手前に差し掛かった、まさにその時だった。
ついに「野生のヒグマ」を目撃したのだ。
まだ体は小さな子グマだったが、私の車の少し先の道路を、左の茂みから右の森へと猛スピードで駆け抜けていった。
これまでの北海道ドライブで、エゾシカやキタキツネは数え切れないほど見かけてきたが、野生のヒグマに遭遇したのは後にも先にもこの一回だけだった。一瞬の出来事だったが、やはりヒグマのシルエットには本能を揺さぶられるような独特の迫力がある。
緊張感を引きずりながら、道の駅のトイレに立ち寄って小休止。

自販機で見つけたこの「サントスプレミアム」という缶コーヒーは、どうやら北海道限定らしい。

朝の眠気覚ましに一本買っていく。
道の駅の裏手に広がる風連湖も、霧で真っ白に閉ざされていた。

今朝は根室半島全域が濃い霧に包まれていたようだ。海流の影響だろうか、道北や道東の沿岸部は本当に霧が出やすい。
道の駅を出発し、国道44号から国道243号へと進路を折る。
これまではずっとオホーツク海沿いを走ってきたが、今日は久しぶりに海から離れて内陸部へと向かうルートだ。
内陸へ入ると霧も晴れ、道の両側には牛が放牧されている牧場など、のどかで牧歌的な風景が果てしなく続く。
途中、道路の路肩に4羽のカラスが佇んでおり、私の車が差し掛かる瞬間に示し合わせたように4羽ともバサバサッと目の前へ飛び出してきた。
ひくことはなかったが、心臓が止まるほどびっくりするので本当に勘弁してほしい。
道の駅 摩周温泉と水郷公園の散策
根室からとにかくひたすら走り続けた。
走って走って走り抜き、ようやく弟子屈(てしかが)町にある「道の駅 摩周温泉」に到着した。

地図で見るとそうでもないように思えるが、実際に走ってみると気が遠くなるほど遠かった。
今日はこれから、この弟子屈付近に点在する「摩周湖・屈斜路(くっしゃろ)湖・阿寒(あかん)湖」という道東を代表する三つの湖を順番に見て回る予定だ。
ここの道の駅の施設や足湯も楽しみたいのだが、着いた時間が早すぎてまだ開館していなかった。
湖をぐるっと回った後で、またここに戻ってくることにしよう。
道の駅のすぐ裏手に、「水郷公園」という自然豊かな公園が広がっている。

少し時間が空いたので、足を伸ばして散策してみることにした。
ちなみに「水郷(すいごう)」という言葉は、川や湖などの水辺の景色が美しい村や町を指す言葉だそうだ。釧路川の源流域に近い弟子屈にぴったりの名前である。

気持ちの良い白樺の林の中を歩いていく。

森を抜けると、清流に架かる「なんだろう橋」というユニークな名前の橋が見えてきた。


この橋の下を流れているのが、道東の大動脈である「釧路川」だ。
ここ弟子屈を源流として、途中あの広大な釧路湿原を蛇行しながら潤し、約57kmも離れた南の釧路市街地を通って太平洋へと注ぎ込んでいる。
川は透明度が非常に高く、川底の石までくっきりと見える。

公園の奥に進むと、立派な野鳥観察舎が建っていた。

四方八方の木立の中から、様々な鳥たちのさえずりが賑やかに聞こえてくる。静かに歩きながら、鳥の姿を探してみよう。
池の周囲をゆっくりと回っていく。

さっそく枝の間に一羽の小鳥を発見した。

胸にネクタイのような黒い模様がある、おなじみのシジュウカラのようだ。

足元に目をやると、子供の背丈ほどもある巨大なフキの葉が群生していた。

この大きさはアキタブキの一種だろうか。北海道の足寄(あしょろ)町などには、高さが2〜3メートルにもなる「ラワンブキ」という品種もあるそうだ。スケールが違う。
また別の鳥の気配。

これもシジュウカラのようだ。葉っぱの影になって顔が隠れてしまった。

鳴き声はあちこちからたくさん聞こえてくるのだが、木々の葉が茂っているため、姿を見つけるのはなかなか難しい。
池の水面にはマガモの姿があった。

水辺にいる鳥は隠れる場所が少ないので、発見も撮影も簡単で助かる。

頭上に、立派な藤の花が咲いていた。

見ごろは少し過ぎてしまっている気がする。

これはサワシバという木らしい。

朝露に濡れてキラキラと光るクモの巣。

澄んだ小川を覗き込むと、小魚の群れが元気に泳いでいた。

足元に鮮やかなオレンジ色の花が咲いている。

これは「コウリンタンポポ」という外来種らしい。以前、当麻町の小沢ダム付近でも見かけた花だ。
公園の端にある水車小屋のあたりまで戻ってきた。

水車の下の水溜まりには、驚くほど大きなマスが悠々と泳いでいた。

朝の澄んだ空気の中での散策を満喫し、道の駅の駐車場へと戻った。

体もすっかり目覚めた。いよいよ摩周湖へ向かって出発だ。